映画「ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記」の記念イベントに出席した左から松本穂香、川口春奈、高杉真宙映画「ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記」の記念イベントに出席した左から松本穂香、川口春奈、高杉真宙 Photo:Sankei

川口春奈主演の映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』が好調だ。10月2日の公開初週に週末動員ランキング1位を獲得し、11月1日までの累計で動員241万人、興収34億円を突破した。本作は、21歳でステージIVの大腸がんと診断され、24歳で亡くなった遠藤和さんの手記を基にした実話作品だ。いわゆる「泣ける実話もの」を商業映画的だと敬遠する映画ファンもいる。ところが本作には、新海誠監督や批評家の東浩紀氏などからも好意的な感想が寄せられている。なぜ『ママせか』は、単なる「お涙頂戴」に終わらなかったのか。(フリーライター 鎌田和歌)

公開前にポスターが炎上
厚労省とのタイアップが中止に

 『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』(以下、『ママせか』)は、公開前にネット上で炎上している。

 これは厚生労働省とタイアップしたポスターが原因だ。8月19日、厚労省がAYA世代(15歳〜39歳)のがん患者向けに制作したパンフレットを周知するために『ママせか』のビジュアルを使ったポスターを公開した。

 パンフレットは、がん治療と生活を支えるための制度を周知するためのものであり、人気俳優が出演する映画とのタイアップによって広く周知されることを期待したのだろう。

 後述するように映画では、がんと告知されながらも当たり前の日常を過ごそうとする主人公の姿が描かれているとともに、実際のがん患者がエキストラとして出演するシーンもある。

 闘病のリアルを真摯に描いた映画だからこその取り組みであったのだろうが、いかんせんタイトルのインパクトが強すぎた。「死」を連想させるタイトルであり、モデルとなった女性がすでに亡くなっていることは知られていたために、「配慮を欠いている」「無神経」といった批判が噴出した。

厚労省公式サイトに掲載されていた、『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』とコラボしたポスターのスクリーンショット厚労省公式サイトに掲載されていた、『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』とコラボしたポスターのスクリーンショット

 厚労省は8月24日、患者や家族への配慮に欠ける点があったとしてタイアップ中止を発表した。たしかに、がん患者に向けた公的な情報提供に、死を強く連想させる映画のタイトルを用いることには慎重さが求められるだろう。
 
 ただし、タイアップの是非と、映画そのものの評価は別の問題だ。

 公開後、映画は好調な興行成績を記録し、作品の評価もおおむね好評のようだ。また、監督に注目する声も少なくない。

※以下、作品の展開や結末に関する記述を含みます。未視聴の方はご注意ください。