今、文藝春秋の仕事で毎月、アジア各国を取材している。6月マレーシア、7月インドネシア、8月ベトナム。9月にはタイに行く予定だ。
日本企業は人を育てるのがヘタクソ
実は、6年前にもそれらの国々を取材した。今回はその後の変化を知る意味もあるのだが、つくづく感じるのは日本企業は人を育てるのがヘタクソだということだ。
アレ?と思う人もいるだろう。日本企業は、人は石垣、人は城と言われるほど人を大事にしてきたではないかと一般的に思われているからだ。しかし、実際、国内を見渡しても「追い出し部屋」や「ブラック企業」など人の問題にことかかない。
追い出し部屋は、不要になった人材を窓際に追い詰め、神経を衰弱させるような話だし、ブラック企業は、若者を食いものにして過労自殺に追い詰めるような話で、両方とも人を大事にすると思われてきた日本企業のイメージを悪くする。
人を育てるのがヘタクソだと言ったのは正にここにある。追い出し部屋の場合、その人が持っている技術が会社の方針に合わなくなったということのようだ。それって当然のことだろう。私は、新刊『断固として進め』(徳間書店)でフジフイルムの化粧品進出についての小説を書いているが、主人公に「技術は寿命があるが事業には寿命が無い」というセリフを言わせている。
技術は、どんなに最先端でも寿命があるのだ。では最初から、そういうことを社員に教え込んでおけばいい。そして寿命を伸ばしたいなら自分で道を切り開くか、その技術しか習得できないなら、それで活きて行く道を考えろと言っておくべきなのだ。それなのに未来永劫面倒を見るような甘いことを言い続けるから、最後の最後で揉めるのではないか。