**組織のはじまり
「その当時、それぞれの業務が思っている通りに行われているかをしっかり把握していたのは四季川さんだ。多分、誰が、いつ、何を担当するというのを、紙に書いて店の奥とかに貼ってあったんだろうな」
「はい。僕のいた店のバックスペースにも、販売メンバーの担当業務の一覧が貼ってありました。誰が何をするのか書いてあります」
「君のいた店では、ちゃんと店のオペレーション管理がされているようだな。そのようにそれぞれの主要担当業務の範囲を明示することが、一般的に言われる組織というもののはじまりになるのだ」
安部野は立ち上がって、サイドボードの横の台の上に置いてあったA3サイズのノートパッドとペンを何色か持ってきた。そのA3の5ミリ方眼のノートパッドをテーブルの上に拡げた。
「仮に、仕入れ・在庫管理、出納管理、出勤管理、の三つの担当があったとする」
安部野は、この三つを横書きで、縦に積み上げて書いた。
「これは言ってみれば、職務名だな。これが、組織の部署名の呼称だとどうなるかな?」
「えーと、商品部、経理部、人事部ですかね」
「ふむ、よくできた。その通り。そして店だから当然、販売機能もある」
安部野は、先ほどの職務名の左に、横長の四角形を縦に三つ並べて書き、その中に、商品部、経理部、人事部と書き、さらに営業部を加えた。そして、さらにその左に分岐の線を書き込みながら言った。