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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで「日本のこれから」を話し合う

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第71回】 2013年9月2日
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 アメリカ人は他社から高い給与と高待遇でジョブオファーがあれば転職するのが当たり前と考えている。転職をする人口が増えるにつれて、労働市場が厚みを増す。この学歴とこの職歴であれば、給料はだいたいこの程度といった大まかな「相場」ができる。労働市場での自分の「価値=相場」を高めれば、人材紹介会社が寄ってきてスカウトしてくれる。

 労働市場は職種別にできており、賃金水準はその職種の需要と供給によって上下する。企業側から需要の多いコンピュータサイエンスの卒業生は引っ張り凧になり、賃金はうなぎ登りに上がってゆく。スキルのある人は職を見つけ易いが、スキルがないといつまで経っても見つからない。平凡なスキルの人はコンピュータに代替されてしまうリスクも出てきている。

 シリコンバレーでは外部人材への依存度は極めて高い。フェイスブック、グーグル、アマゾンと言った企業の間で、優秀なソフトウェアエンジニアの争奪戦が繰り広げられている。高度なアルゴリズムを書けるエンジニアは限られている。優秀な人材をスカウトしないと会社の成長が止まってしまうからだ。昔はマイクロソフトが人材の牙城だったが、今はフェイスブック、グーグル、アマゾンが人材の牙城になっている。

 熾烈な競争社会だから、皆良く勉強する。会社の研修のほかに自ら進んで自己啓発をする。仕事をしながら夜学に通う人も多いし、ウェブ上のオンライン・コースを受講する人もいる。シリコンバレーにはカリフォルニア大学が開講している夜学があり、自発的に学ぶ人たちで溢れている。年齢も20代から60代までと幅広い。皆がより良い賃金を求めて日々努力している。

 さて冒頭のシーンに戻ると、このパネルディスカッションでは、カリフォルニア大学サンディエゴ校で日本研究に長く携わってきた教授が基調講演を行った。講演要旨は「たとえ日本の大企業の一部が元気がなくなったにしても、中小企業の中には他社が真似できない技術を持ち、高い世界シェアを持っている企業があるから大丈夫」といったトーンだった。聴衆の中からは異論が出た。こうした企業のGDP貢献率は大企業に比べてはるかに小さいが、それでも大丈夫といえるのかといった異論だった。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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