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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで「日本のこれから」を話し合う

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第71回】 2013年9月2日
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 外部人材を積極採用すれば、社内人材の出世期待感を削ぐことになると反対意見も出るだろう。だが経営トップの方針にブレがなく、長期に渡って貫き続けることができるならば、やがて社内の優秀な人材が外部人材と協力体制を敷くことが自分の出世にも有利に働くと考える人が増えてくるだろう。そうなれば改革は自然に浸透するだろう。

 では経営者のこうした変革努力を誰が評価してくれるのだろうか。株主であろう。株主は旧来の制度をそのまま因襲していては、その先に未来がないことを薄々感じでいると思う。社内改革の姿勢を見せることで株価は上昇するだろうし、変革の努力が目に見える結果に現れてくれば、更に高い評価をしてくれるだろう。

 80年代まで機能してきた終身雇用・年功序列がもはや機能しなくなり、グローバル時代になってからは、逆に「成長を阻害する制度」になっているように思う。旧来制度から段階的に離脱しながら、自社なりの成長戦略を立てて行かなければならない。政府の救済も当てにできる時代ではない。膨大な借金を背負った政府に、民間企業の救済に乗り出す余力はないからだ。企業自身が自らを変革していかなければ、生き残りは難しい。

 アップルの元社長スティーブ・ジョブズが生前に周りの人に語っていたエピソードがある。「カリフォルニアの海岸に巨大な鯨の死骸が大量に漂着する」。鯨は何らかの原因で方向感覚を失い、海岸に集団座礁して大量死することがある。「鯨」は日本の電機業界を揶揄したものだ。筆者はこれを読んだときに「失礼な」と思って一笑に付した。だが昨今の現象を見るにつけ、笑えなくなってきた。

 生きる鯨になりたいのか。それとも死んだ鯨でも良いのか。筆者は今回のパネルディスカッションを聞いていて危機感を新たにした。アベノミクスの「成長戦略」がどのような内容になるにせよ、国家が青写真を描くだけでは成長できない。成長の担い手である日本企業が自らを変革して「環境への適応能力」を身につけなければ、日本経済を成長軌道に戻すことは難しい。グローバル時代の試練はまだ始まったばかりだ。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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