今こそ千載一遇のチャンスだ──。経営再建に向けた資本増強に迫られるシャープが、株式市場の追い風を受けて、いよいよ公募増資かと思われた矢先に待っていた誤算とは。
公募増資のタイミングを9月以降に調整したい──。8月9日、お盆休みを目前に控えた金曜日のこと。シャープ本社(大阪)の経営幹部らの手元に届いた1通のメールが、同社の経営再建をめぐる思わぬ“誤算”が起きたことを告げていた。
本来なら、経営陣は翌日からの夏休みを、もう少し前向きな気持ちで過ごせるはずだった。
というのも、このメールの差し出し人である野村証券との間では、かねて8月下旬に一般投資家からおカネを集める公募増資を発表するというシナリオを組み立てていたからだ(下図参照)。
2013年3月期まで2年累計で約9213億円の最終赤字を計上して、自己資本比率はすでに6%(今年6月末時点)と危険水域にあり、有利子負債は1兆1694億円にも達している。
厳しいシャープの「V字回復」を信じてもらうためにも、主力銀行であるみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行の両行の支援下で、それなりの復活シナリオを示そうと奔走してきた。
8月1日に発表された第1四半期決算では、3四半期連続となる営業黒字30億円を計上。深海から水面にやっと顔を出した程度ではあるものの、大赤字だった液晶事業の立て直しを印象づける材料にはなった。