ただし、起業はマラソン大会と大きく異なる点があります。それは、「ゴールがない」ということです。
起業はゴールではなくスタートであり、続けていくことがとても難しいのです。また、起業しても、「何歳まで続ける」とか「1億円を貯めたらおしまい」というように、ゴールを設定している人はほとんどいません。うまくいけば、たとえ起業した本人がいなくなっても、老舗企業のように長年続くこともあります。起業家は、起業した瞬間から、「終わりのない旅をできるだけ長く続けたい」と思って延々と経営努力をすることになります。
ところが、起業を志している人は、事業を長く続けていくことを視野に入れた事前準備を忘れがちです。多くの起業志望者が、あたかも起業そのものをゴールのように勘違いし、そのための準備しか行っていないのです。だから、いざ起業しても、短期間で倒産や廃業という事態に追い込まれてしまうわけです。
そこで、ぜひ知っていただきたいのは、ただ単に起業を実現するためだけではなく、起業して少なくとも5年は続けられるようにするための事前準備の方法です。それ以上長く続けるには、経験を積んだ上での経営努力も必要になりますが、その前につぶれてしまっては仕方がありません。長年にわたって続けるためにも、起業前にしっかり準備することが重要なのです。
それでは、首尾よく起業して5年以上事業を継続している起業家は、どんな準備をしているのでしょうか。
もちろん、起業は千差万別ですから、人によってさまざまです。でも、うまくいっている人が準備しているもののなかに共通する項目がいくつかあります。また、いくら「起業前にしっかりとした準備が必要」といっても、何年も前からコツコツやればいいというものでもありません。経済環境の変化が激しいので、5年前に得た情報は陳腐化してしまいますし、年月が過ぎるうちに今やっている仕事に流されてしまい、いつまでたっても起業ができず、夢が夢で終わってしまうこともよくあります。
起業を決意したなら、1~3年後にターゲットを定めて、集中的に準備していくことが重要です。この連載では、このような観点から、起業前に必ずやっておいていただきたい事前準備に焦点を当ててお伝えします。