手書きのノートが強力なツールとなる

 起業準備のためにお勧めしたいのが、手書きのノート(起業ノート)を活用することです。

 そのノートには、ビジネスのアイデア、経営ノウハウ、行動計画など、起業準備をしている過程で発生するさまざまな情報を記録していきます。とても原始的な方法のようですが、ノートをつけることによって、起業の計画を徐々にブラッシュアップしていくことができます。

「ノートなんかに書かなくても頭の中に入っているから大丈夫」という人もいますが、よほど記憶力が優れた人はそれでもいいでしょう。でも、ほとんどの人は覚えたことの大半を忘れてしまいますし、頭で考えているだけでは発想がぐるぐるとめぐるだけで、なかなか定まらないものです。起業するまでにせっかく十分な期間をかけて準備を行ったつもりでも、その過程で得た情報を記録していなければ、準備の効果はきわめて乏しいものとなってしまいます。

 事実、起業して事業を軌道に乗せている起業家は、なんらかの形で起業の準備過程を記録しています。逆に、いつまでも起業できない人や起業してもうまくいっていない人は、記録を残していないことがほとんどです。起業準備の記録は、起業を実現させるまで、あるいは起業したあとでも、トラブルに直面するなど窮地に陥ったときに、自らを助けてくれる心強い指針となってくれるものなのです。

 ノートをつけることによる効果は、主に3つあります。

 1つは、頭でモヤモヤと考えていることを文字で可視化することによって、思考が整理できることです。起業を考えていると、多くのアイデアが浮かんできますが、それを書いて冷静に見返すという作業を繰り返すと、使えるか使えないかが判断できるようになります。また、多くの自己啓発の書籍などに書いてあるように、「目標は書くことによって実現する」ということもいえます。

 2つ目は、起業準備に関する情報を一元化することによって、不足しているスキルやノウハウが明確になるということです。起業してしまうと、忙しくなり、スキルアップのための時間がとりづらくなります。できるだけ準備段階で、事業運営のために必要なスキルとノウハウを身につけておくことが重要です。