起業したあと1年後に27%の経営者が廃業し、とくに個人事業主は38%が商売をやめるほど、経営を続けることは難しい。成功している経営者と失敗する経営者では何が違うのか――。日本政策金融公庫で3万人以上の経営者を支援してきた上野光夫氏にそのポイントを聞いた。
起業でうまくいく人、ダメな人の違いは何か
「いつかは起業したいと考えていますが、どうしたらいいでしょうか?」
私の事務所には、連日このような方が相談に来られます。年齢層は10代の学生から60代の方まで幅広く、男性だけではなく女性もいます。
相談の内容は、資金調達に関することをはじめとして、ビジネスプランのつくり方、マーケティングなど多岐にわたりますが、その根底には、「私って起業してうまくいくだろうか?」という不安を解消したい気持ちがあるようです。
起業したい気持ちはあるのだけれど、一方では「失敗したらどうしよう」という根強い心配があって、起業に踏み出せないわけです。それでも、なんとか起業を実現させたいという思いが強い人は、「どうやったら起業してうまくいくのでしょうか?」と真剣な眼差しで質問してきます。
数多くの起業家に接してきた経験から、起業でうまくいくポイントを一言で述べるとすれば、「しっかりと事前準備をしたかどうか」に尽きます。事前準備をしないで起業するのは、トレーニングをせずにマラソン大会に出場するのと同じです。途中で倒れる羽目になるのがオチで、完走なんてできないでしょう。
起業そのものを実現するのは度胸さえあれば誰にでもできることですが、事業を軌道に乗せるのはとても困難で、いかにして会社をつぶさず経営するかが大きな課題です。そのためには、入念な事前準備が欠かせません。ところが、起業した人の中には、事前準備が不足している状態でスタートしたために、すぐに破たんしてしまう人がとても多いのが実態なのです。