日本最大級のコワーキングスペースを設立・運営する傍ら、年200回を超えるイベントで全国の起業家たちの背中を押す。そして数字よりも人物を見て現在までに60社に投資。うち複数がイグジットしただけでなく、未だに倒産はゼロ――。
その実績から2010年代の起業ブームの中心人物と目されるインキュベーターが、「いま、この日本での」起業のリアルを解説する連載の第2回は、著者が全力でサポートする「第4世代」と呼ばれる若い起業家たちの特徴を解説します。
第4世代の特徴は社会貢献という意識
僕がふだん付き合っている第4世代の起業家には、いくつかの特徴があります。
まず、お金への意識、使い方が上の世代とかなり違うように思えます。世の中が起業家に抱くイメージには「挑戦」と「お金」の2つのイメージがあると思いますが、第4世代の起業家は、「社会問題への挑戦」のイメージが圧倒的に強く、「お金」の色を感じさせない人が多いのです。
上の世代のみなさんが、お金のことしか考えていないというわけではありません。たとえばサイバーエージェントの藤田晋さんはお金に執着がないことを公言されていますし、著書やブログからもそうした本音は伺えます。
しかし、人はどうしても時代のイメージをまとってしまいます。ヴェルファーレに孫正義さんが飛行機をチャーターして駆けつける、六本木ヒルズに集まったベンチャー社長が「ヒルズ族」と呼ばれる……といった空気に人はどうしても左右されてしまうのです。
一方、いまの時代の空気は、「社会貢献」です。日本をどうにかしよう、自分が感じた「不条理」をなくしたい、と本音で言う起業家がほとんどのように感じます。僕と将来の話をしていても、「起業家として成功したら、次の起業家を支援するためにお金を使いたい」「榊原さんのようなインキュベーターになりたい」と言ってくれる人が多いのです。
もちろん、こうした印象は、第4世代の起業家たちがまだ若いこともあるでしょう。また、そもそも起業にお金がかからなくなり、その回収に執着する必要性が薄れたという理由も大きいと思います(この点はあとでまた説明します)。しかし、そうした「社会」の意識をもった人がいまの起業ブームを担っており、「成功しやすい人」と思われていることは心に留めておいてください。
最初から海外志向
第4世代のもう1つの特徴は、最初から世界での展開を当りまえのように意識しているということです。
かつての起業家たちの目は、基本的に国内市場に向いていました。米国のビジネスモデルを輸入するだけでそこそこ稼げる時代もありましたし、まず国内でシェアをとってから海外へ、というのも当然の考えです。しかし、いまは、いきなり世界を目指すケースもあります。世界で通用する技術力と発想力をもち合わせ、1人でも大企業や世界を相手に戦う。そんな起業家が日本でも育ちはじめています。