ガソリン価格が高騰している。シリア情勢の緊迫化で、不安定化要因が増した。その一方、相変わらずの過当競争で、元売り、ガソリンスタンド共に疲弊し、淘汰の波が迫っている。
「ガソリン価格はいったいどうなるんでしょうか」──。8月31日、9月1日の週末、都内の大規模ガソリンスタンド(GS)に給油に訪れた客からはこんな不安の声が相次いだという。
米国がシリアへの軍事介入の検討に入ったことで、遠く離れた日本の消費者も神経質になっている。産油国が密集する中東情勢が混迷化すれば、懐に跳ね返るとみているからだ。
Photo by Rika Yanagisawa
ただでさえ、ガソリン価格は高値で推移している。昨年夏、1リットル当たり140円台前半で推移していたレギュラー価格(石油情報センターの調査による全国平均)が今年に入ってからは150円台に上がり、8月には4年10カ月ぶりに160円を突破した。
駄目押ししたのは、石油元売りによるGSへの卸値の引き上げだ。原油価格の高止まりと連日の猛暑による需要増で、全国シェア3割の最大手・ENEOS系列店へガソリンを供給するJX日鉱日石エネルギーは8月、ガソリン卸値を前月に比べ1リットル当たり3.5円(月間平均)引き上げた。他社も同様に3~4円弱値上げした。
ある都内の小規模GS店主は「ガソリンが高くてお客さんに文句を言われても、増えた仕入れコストはとてもじゃないが吸収できる額ではない」と嘆く。元売りによる引き上げ分が、ところてん式に小売価格に転嫁されている。
だが、冒頭の大規模スタンドでは「戦争が始まっても価格が上がるか下がるかわからない」と答えている。その理由はなぜか。
実は、平均価格の上昇と裏腹に、局地的には熾烈な価格競争が繰り広げられている。「ガソリン価格160円」ではなく、「149円」「148円」といった看板を掲げて安値で客を吸い寄せるGSが全国で多々見受けられるのだ。
なぜこんなに小売価格に差が出るのか。そもそも流通ルートやGSの業態によって仕入れ値が大きく異なる。ここに激安ガソリンの謎を解く鍵がある。