今やマタハラ(マタニティ・ハラスメント)は、職場においてセクハラ、パワハラと並ぶ3大ハラスメントとされている。今年5月に連合が行った意識調査によると、回答した20~40代の女性社員のうち25.6%が、マタハラ被害を受けた経験があるという。これは、前年調査におけるセクハラ被害者を上回る数字だ。実際に被害者を取材してみると、妊娠を報告しただけで解雇を通告されたり、妊娠中にもかかわらず激務を課せられて「職場流産」に追い込まれるなど、極めて悪質なケースもある。今回(一般企業編)と次回(専門職編)の2回にわたって、働く女性の未来を奪い去る「マタハラ職場」の悲惨な現状に迫る。(取材・文/ジャーナリスト・小林美希)

上司に妊娠の報告をすると
当然のように退職を示唆される

女性の社会進出が進んだ現在も、社員の妊娠・出産への理解が著しく低い職場は世の中に少なくない(写真はイメージです)
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「引き継ぎはいつにしようか。仕事は辞めて子育てに専念するんでしょ?」

 東海地方の電気関連会社に勤める今野彩花さん(仮名・29歳)が上司に妊娠の報告をすると、まるで当然のように「退職」の二文字を突き付けられた。学生時代から「結婚しても、出産しても働き続ける」と信じて疑わなかった彩花さんにとって、上司の予想外の言葉に唖然とするしかなかった。

 働く女性が妊娠や出産することで解雇・雇い止めされることや、職場で受ける肉体的・精神的なハラスメントが「マタニティ・ハラスメント」(マタハラ)と呼ばれ、注視されるようになってきた。

 マタハラという言葉はこれまであまり浸透していなかったが、職場においてセクハラ、パワハラと並ぶ3大ハラスメントとされている。今年5月、連合(日本労働組合総連合会)が『マタニティ・ハラスメント(マタハラ)に関する意識調査』を実施すると、回答した20~40代の女性社員の約5割が、産前産後休業や育児休業が法律で守られている権利すら知らなかったという。

 実は、冒頭の彩花さんのように、それとは知らずにマタハラを受けているケースは少なくない。彩花さんの上司の妻は専業主婦。上司の個人的な考えとしても、「子どもが小さいうちは、母親は働かずに家にいたほうがいい」と常々聞かされていた。いざ自分が妊娠すると、上司は彩花さんの意に反して「辞めたほうがいいのではないか」と強調するようになった。