昼夜鳴り止まないナースコール
激務の看護師は常に流産と隣り合わせ

「看護師の世界では、切迫流産(流産しかかる状態)なんて当たり前。それでも働き、流産する女性が多い」

 都内の民間病院(約500床)で働く看護師の芦屋沙希さん(仮名・32歳)は初めての妊娠で、自身に宿った新たな生命を失った。

 95%が女性の職種であるにもかかわらず、人手不足状態の看護の現場では、過酷な勤務と妊娠異常の問題が常に背中合わせとなっており、法の定める「母性保護」規定は無視され続けている。そのため、ベテランになるまで働き続けられない現実がある。

 内科系の病棟で働く沙希さんの日常は、まさに「走り回る」1日を過ごす。糖尿病や肺炎などを患った寝たきりの高齢患者を、中心に受け持つ。バイタルサインのチェック、点滴や検査、薬の準備や清拭(体を拭くこと)などの基本的な業務をこなす。

 寝たきりの患者には、褥瘡(床ずれ)ができないよう、2~3時間おきの体位交換が欠かせない。褥瘡ができ、悪化すれば、手の拳より大きな部分が腫れ上がり、膿が湧き出るような状態になる。最悪の場合、体の組織が壊死して切除が必要となる。

 しかし、寝たきり状態の大人の体を支えたり、動かすのは重労働だ。本来は、安全を保つためにも2人ペアで体位交換を行なうのだが、人手不足で1人でせざるを得ない状況。20代のうちから、沙希さんはもちろん、同僚の多くが腰痛持ちとなった。

 日勤でも夜勤でも、鳴り止まないナースコール。病状の変化だけでなく、「何か物をとって欲しい」「トイレに行きたい」「オムツが不快になった」「水が飲みたい」――。寝たきりの患者にとって、どれも深刻だ。

 ベッドサイドで患者に呼び止められても、「ちょっと待ってね」と言いながら、なかなか対応できない。さらに、病院は経営効率を高めるために、混合病棟化を進めている。ベッドに空きがあれば、オペ後の外科の患者も来る。診療科が違えば素人同然の世界で、いつミスをしないか緊張の日々が続く。