隠れた「説得上手」キャラ
近藤の行動にも人を動かす極意がある

 2つ目は、近藤が田宮電機の社長を説得したシーンにありました。

 大和田に裏切られた田宮社長に、何のためにこんなことをしているのかと聞かれた近藤のセリフ。

「決まっているじゃないですか、この会社のためです」。

 このひとことに、私は人を動かす重要な鍵が隠されていると思っています。それは、説得する本人が持っている「意図」です。

 会社や自分の利益のため、自分の保身のためなど、説得する本人が得をしたくてその手段として相手を動かそうとする意図のある説得は、結果として成功率が低くなります。

 人は想像以上にそうしたことに敏感です。ただ単に、理論武装して理屈だけで攻めても、相手が一度「何か裏があるんじゃないか」と感じる説得は非常に難しくなります。

 ここで大切になってくるのが、「信頼」です。効果的な説得の構成要素として、信頼性は不可欠です。説得する本人がどれだけ信頼にたりうる人物か。説得の意図は明確か、その意図はどういうものか、説得された後の結果は、説得される側の本人にとってメリットがあるのか、こうした心理状態を満たすことで、はじめて説得は成功するのです。

 今回の近藤による説得は、まさに上記要素を満たしています。説得の意図は「会社を救うため」であり、それは「田宮社長のメリット」でもあります。さらに、日ごろの働きぶりから、近藤が真面目な人間であることは実証済み。

 みなさんも、誰かを説得する場合はその説得が「どのような意図」を持つか、それを明確に相手に伝えることができるのか、そこに自分の打算、相手への裏切りはないのか、もう一度考えてみることをお勧めします。