長期投資とは
永遠に運用すること

加藤 これを打開するには、インデックスファンドを直接販売で広めていくということが一番有効なのかもしれませんね。

銘柄や市場、時期を選ぶと77%負ける!?<br />単純な「楽ちん投資」がお金をふやす中野晴啓(なかの・はるひろ) セゾン投信株式会社 代表取締役社長。公益財団法人セゾン文化財団理事、NPO法人「元気な日本をつくる会」理事。1963年東京生まれ。1987年明治大学商学部卒、クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金の運用のほか、外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産等の運用アドバイスを手がける。その後、(株)クレディセゾン インベストメント事業部長を経て2006年セゾン投信(株)を設立、2007年4月より現職。米バンガード・グループとの提携を実現、現在2本の長期投資型ファンドを設定、販売会社を介さず資産形成世代中心に直接販売を行っている。また、全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にするための活動を続けている。『運用のプロが教える草食系投資』(共著・日本経済新聞出版社)、『20代のうちにこそ始めたいお金のこと』(すばる舎)、『30歳からはじめる お金の育て方入門』(共著、同文館出版)、『年収500万円からはじめる投資信託入門』(ビジネス社)ほか多数。

中野 あとは、実際に投資信託を購入する個人に向けて、我々がどう情報発信を続けていけるかですね。リーマンショックの暴落時に、他の金融機関は「他のファンドに乗り換えて損失を早めに取り返しましょう」といった営業を行ったため、その前後に運用されていたファンドは随分、資金流出に悩まされたようです。

 でも弊社のファンドはほとんど解約が出なかった。その時期から続けている人たちは最近の円安で基準価額が上がり、大幅な利益が出たと非常に喜んでくれました。

 ところが設定来、ずっと資金流入を続けてきた2本のファンドとも、基準価額の上昇にともなって、まとまった解約が出てくるようになりました。恐らく利益確定のための解約でしょう。結局、利益が出ていると人は売りたくなってしまうものなんですね。

加藤 それは解約した後、そのお金をどうするのかという視点が欠けているのだと思います。もちろん、使う予定が決まっていて、その時期が来たから解約するというのなら分かりますが、利益が出たから解約すると、では値下がりした時に再び買えるのか、そこをしっかり考える必要があります。往々にして、下がったから買えるのかというと、足がすくんでしまって、買えないというケースが大半だからです。結局、次の収益機会を逃してしまう。

中野 本当の長期投資というのは、基準価額が上がっても、下がっても、淡々と続けていくことです。つまり長期投資には忍耐が必要なのです。この点を私たちはもっと伝えていかなければなりませんし、長期投資を志した人たちは、とにかく続けるということを自分に言い聞かせないと、ちょっと利益が出ただけで、すぐに解約してしまうものです。

 そして、下がったところは買えないのに、逆に上がると「もっと上がるかも」と買いに行ってしまう。結果、高値掴みになり、その後の下落で、前回利益確定した際の利益をすべて失ってしまう人もいます。タイミングに合わせた売買というのは、上手くいかないものなのですから、やはり保有し続けることが、リターンを向上させる何よりの方法ともいえるでしょう。

加藤 長期投資に特定の年数はありません。結局、老後のための資産形成は、誰にとっても必要です。だから、誰もが老後の生活を視野に入れて、資産を長期運用する必要があります。いや、むしろ長期投資以外の投資はしなくても良いとさえ、言えるのではないでしょうか。

「結婚資金」や「教育資金」というように、目的別に資産運用のプランを考えるのもいいのですが、資産運用の最大の目的はやはり、老後の生活資金確保であり、その前にもし教育資金が必要になったら、必要な額を取り崩して、あとはさらに運用し続ければいいのです。

中野 永遠に運用するというくらいのスタンスでも良いかも知れません。自分が寿命を迎えたら、子どもにそのファンドを引き継げば良いのです。こうして子どもも、孫も、そのファンドに少しずつ自分の財産を加えながら運用を継続していく。そうすれば、三代目、四代目になる頃には、大きな財産が出来ているでしょう。これから投資信託での運用を始める人は、その礎になるんだという気持ちを持ってファンドを選ぶべきですし、我々もこうした長い時間の経過に耐えうるファンドの運用をしていきたいと思います。


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