運用ランキング1位でも
それはずっと続かない!
中野 基本的な考え方は、私も加藤さんの意見と同じです。相場予測は外れるものだし、インデックスに勝つのは難しいのも事実です。でも、中には優秀なファンドもあると思います。それは、企業の本質的な価値を見極めて投資しているアクティブ運用です。これはこれで合理的なアプローチだと思うのですが。
加藤 でも、アクティブマネージャーは、誰でも全力で投資成果を競っているのです。誰も平均以下を狙っているアクティブマネージャーはいません。そして、彼ら全員の総体的投資行動の結果が市場のプライスを形成しているんですよ。
中野 確かに、個人投資家が今、入手できる情報で優れたアクティブファンドを探すのは難しいですね。
加藤 米国株式を対象にした米国籍投資信託の運用実績を単年度で見ると、これも面白いことが分かります。たとえば2002年時点での上位10ファンドのランキングが、2003年、あるいは2012年にどうなったのかを見ると、たとえば2002年時点で1位だったファンドAは、2003年に975位、2012年に935位というように大きく下げています。あるいはもう少し長期で見て、1992年から2002年までの10年間運用で1位の成績だったファンドは、2002年から2012年までの10年間で1141位まで落ちました。
つまり、ある期間、ある年で運用成績が1位だったファンドを買ったとしても、その後も上位であり続ける保証はどこにもないということです。将来の優秀ファンドを予め知ることはできないのです。一方、インデックスファンドであれば、外れることなく平均点が取れるのです。いや、実際はアクティブファンドの平均以上ですが。
中野 それも単一の資産クラスではなく、世界中の株式や債券に分散投資したファンドであれば、なおのこと運用成績は安定しますしね。
加藤 そうです。もうひとつ面白いデータをお見せしましょうか。これは各国の株式市場のパフォーマンスランキングなのですが、非常にランダムにランキングが変化して、ものすごくわかりづらい図になっています(笑)。
つまりそのとき1位に入っている市場も毎年目まぐるしく変化しているのです。それを事前にわかっていて、どんどん乗り換えていけば、今頃、億万長者になっているわけですが、そんなことできると思いますか。
中野 こういった投資の基本的なことが分かっていながら、日本の金融機関はきちっと分散されたファンドを売ろうとしない。結構、根深い問題がありますね。
特にインデックスファンドは、コスト(手数料)が安くて販売する側が儲からないから売らないという側面が多分にあります。同じくETFにしても、良い商品なのに、コストが安いため販売する金融機関に売ろうという気がないのでなかなか取引が増えない。結局のところ、販売側に大きな問題があるとしか言いようがありません。