歴史に名を残す偉人たちも「本の力」によって、時には絶望から立ち上がり、時には傷ついた心を慰めたりしてきた…。日本における推理小説のパイオニア・江戸川乱歩を、先の見えない人生から救ったのも「読書」の力だったという。新刊『本を読む人だけが、“自分の壁”を突破できる』(青春出版社刊)から、抜粋して紹介します。前後編の前編です。

活字に別世界を見出した江戸川乱歩の青春時代

 日本推理小説のパイオニアとなった江戸川乱歩は、「本の力」で生かされた、といっても言いすぎではないだろう。江戸川乱歩は物心ついた頃から非常に寡黙で、独りで何か空想することを好んだ。日暮れの町を歩きながら、妄想をセリフにすることもしばしばだったという。

「会話を好まず、独りで物を考える、よくいえば思索癖、悪くいえば妄想癖が、幼年時代からあり、大人になっても、それがなおらなかった」

 小学校に入っても周囲になかなかなじめない。休み時間には、グラウンドを駆け回るクラスメートを眺めながら、乱歩は校庭の隅っこでポツンと1人立っていたという。

 そんな乱歩少年の想像力を多いにかきたてたのが、活字の世界である。乱歩は、はやくから新聞に興味を持ち、連載されていた探偵小説を母に読んでもらうのを楽しみにしていた。

 父の書斎もお気に入りで、天文学の本を読んでは、宇宙に思いを馳せ「光年というものの恐ろしさに震え上がる」など、別世界を活字に見出した。