「中田課長。今日、時間あったら飲みに行きませんか」

 最近の若手新司クンはちょっと変だ。少し前なら、仕事が終わるやいなやそそくさと帰宅していた。

「いいけど、早く帰らなくていいのか。子どもも生まれたばかりなんだろ」

「だから帰りたくないんスよ…」

 若手クンがビール片手に涙目で語った内容は、次のようなものだった――。

 以前はかわいく優しかった妻が、長男が生まれてから変わってしまった。いつもカリカリ怒っているし、自分を邪魔者扱いする。『汚い手で赤ちゃんに触らないで!』『うるさいからゲームやめて!』『育児を手伝ってくれないなら、せめてどっか行ってて!』といった具合なのだ。

「このあいだなんて、夜遅く疲れて帰ってきたら『今、寝付いたばっかりなのに起きちゃったじゃない!』って怒るんです。いくらなんでもヒドイですよ」

 離婚も真剣に考えている、という。

 中田堅二課長は遠い目になった。自分たち夫婦にもそんな時期はあったような気がする。どうにか危機は乗り越えたものの、今の妻は昔とはまるで別人だ。新婚の頃の初々しい面影はどこへ消えたのだろうか――。

 

「別の生き物」
になった妻たち

 子どもの誕生を喜ばない父親はいないだろうが、夫婦関係の変化に戸惑う男性は多いようだ。IT系企業に勤める30代男性はこうこぼす。

「昔は明るくかわいらしい女性だったのに、今はいつも文句タラタラです。『自分は育児に明け暮れているのに、あんたは外で好きなことばかりやっている』って。別に好きなことをやってるわけじゃないですよ。家族を養わないといけないから、こうして必死に頭を下げて営業してるんじゃないですか。くたくたになって帰ってきてあれじゃあ、ホント報われないですよ」

 かなりの大恋愛の末に今の妻と結ばれたというこの男性。「今や彼女の関心は子どもにばかり向けられ、自分はまったく顧みられない」とも嘆く。

 2児の父親である40代の男性(出版系)は、妻との関係が対等なパートナーシップではなく、「上下関係」になってしまった、と感じている。