羽田空港・国際線の発着枠配分の調整が大詰めを迎えている。そうした中で、「均等配分」を求めるJALと「傾斜配分」を主張するANAの論戦が激しくなっている。確かに短期的にみれば均等の方が消費者の利益は向上するのかもしれない。しかしJALは経営破綻から政府支援で復活。政府支援で生まれた競争歪曲に蓋をして、均等な配分が競争活力を生み出すという理屈は、受け入れがたい。
JALは「均等配分」
ANAは「傾斜配分」を主張
1965年生まれ。慶應義塾大学卒。共同通信社で、財務省、金融庁、経済産業省、国土交通省、農林水産省、文部科学省などの中央省庁、日銀、大手銀行、航空会社などを取材した。主な著書に『巨象の漂流~JALという罠』(講談社)、『企業復活』(講談社)、『竹中平蔵の戦争』(PHP)、宮崎哲弥氏との共著で『平成革新官僚』(中公新書ラクレ)がある。
2014年春に羽田空港の国際線の発着枠が大幅に増える。これまでの年約6万回が約3万回も上積みされ、1日当たりの往復便ベースで約40便も増枠するだけに、人やモノの流れを拡大、日本の経済成長を押し上げる効果にも期待がかかっている。
交渉が難航している米国便の配分は棚上げになる可能性があるが、その他の枠の配分は9月末に決定する見通しで調整は大詰めを迎えている。こうした中、日本の航空会社に振り向けられる枠の配分をめぐって「均等配分」を求めるJALと「傾斜配分」を主張するANAの論戦が激しくなっている。
JALは均等の方が、二社間でサービスや価格の競争が起こり、利用者の利益になると主張。地方空港空との乗り継ぎの利便性向上なども含めて、大きな経済効果が見込めるとしている。
確かに短期的にみれば均等の方が消費者の利益は向上するのかもしれない。しかしJALが経営破綻から政府支援で復活したことを見逃すと、問題の本質が見えなくなる。JALは会社更生法と政府支援によって年1000億円もの当期利益押し上げ効果を手にしているのだ。市場でメインプレイヤーの数が少ない場合、1社だけを政府が手助けすれば、競争環境は不平等になる。政府支援で生まれた競争歪曲に蓋をして、均等な配分が競争活力を生み出すという理屈は、受け入れがたい。