2020年の夏季オリンピック・パラリンピックの開催地が、東京都に決定した。1964年以来、56年ぶりに夏季五輪が日本にやって来る。投票が行われた9月上旬のIOC総会以来、日本列島はお祭りムード一色だ。アベノミクスで景気回復の兆しが見え始めたなか、国民の「期待」はさらに高まり、あらゆる需要が動き出しそうな気配だ。これから7年の間に、五輪効果はどのように現れてくるのか。精緻なデータ分析においては他者の追随を許さない宅森昭吉・三井住友アセットマネジメント理事に、「2020東京五輪」の真の経済効果を聞いた。五輪の経済効果に期待する行政、企業関係者は参考にしてほしい。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 編集長・原英次郎、小尾拓也)

五輪を勝ち獲ったオールジャパンの底力
国民の「期待値」はさらに高まるのか?

――9月上旬、アルゼンチンのブエノスアイレスにて開催されたIOC(国際オリンピック委員会)総会では、2020年夏季オリンピック・パラリンピックの開催地決定投票が行われ、東京がイスタンブール(トルコ)、マドリード(スペイン)を大差で破りました。56年ぶりとなる悲願の夏季オリンピック(以下、五輪)開催決定に、日本中が歓喜に包まれています。五輪の誘致活動において劣勢が報じられていた日本が勝てたのは、なぜだと思いますか。

たくもり・あきよし
三井住友アセットマネジメント理事、チーフエコノミスト。1957年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学経済学部卒。80年三井銀行(現三井住友銀行)入行。調査部・市場営業部などを経てさくら証券、さくら投信投資顧問に出向。2002年三井住友アセットマネジメントに出向し、現在に至る。経済企画庁「動向把握早期化委員会」委員、「景気動向指数の改善に関する調査研究会」委員などを歴任。現在、内閣府「景気ウオッチャー調査研究会」委員、JCER「ESPフォーキャスト調査委員会」委員。著書に『日本経済「悲観神話」はもういらない』『ジンクスで読む日本経済』など。

 何といっても、スピーチの人選と順番が絶妙だった。皇族として初めてIOC総会に出席された高円宮妃久子さまが、東日本大震災復興支援への感謝の意を述べられて委員の心を掴んだところで、スピーチのトップバッターに無名のパラリンピック選手・佐藤真海さん(女子走り幅跳び)を持ってきました。

 病気で足を失った彼女は、スポーツによって元気を取り戻し、パラリンピックに出場するまでになった。さらに、先の大震災で実家が被災しながらも、被災地でのボランティアに尽力し、やはりスポーツによって復興支援を行った。自分の実体験に基づいて「スポーツの持つ力」を訴えたことには、強烈な説得力がありました。あれで勝負は決まったと思います。

安倍晋三首相も懸念事項の汚染水問題について、言葉を選びながらゆっくり説明し、原発は完全に政府のコントロール下にあり、安全であることを明言しました。

 スペインには財政危機不安がまだ燻っているし、イスラム諸国に取り囲まれているトルコも安全性の面で不安がある。最終決戦に残った候補地の中で、確実性・安全性という面ではやはり日本に分があった。