ドル箱商品の携帯電話が販売不振に陥った責任は総務省にある。これは官製不況なのだ…。

 こんな不満の声が、相変わらず、携帯電話機メーカーの間にくすぶっている。携帯電話機の販売不振について、昨年秋から本格化し始めた販売慣行の見直しに原因があるといい、そのきっかけを作った総務省に責任を転嫁しているのだ。

 だが、この不満が正鵠を得ているとは言いにくい。むしろ、本当の原因は、国内の携帯電話市場の成熟にあり、携帯電話会社が「販売奨励金制度」を見直して乏しくなった利益を囲い込んだというのが実態だ。

 メーカーは速やかに電話会社依存体質を改めないと、浮上のきっかけを掴めないのではないだろうか。

割賦販売の導入により
メーカー側の不振は深刻

 電子情報技術産業協会(JEITA)が今週初め(18日)に発表したところによると、携帯電話機の上半期(2008年1-6月)の国内出荷台数は、前年同期比5.2%減の2492万3000台にとどまった。しかも、上半期ベースでみると、2年連続の市場縮小だ。その減少幅は前年同期(0.7%減)を上回り、縮小ペースが拡大しているという。

 もちろん、その経営に対する影響は深刻だ。例えば、業界最大手のシャープの場合、第1四半期(2008年4-6月期)の連結決算は、売上高が前年同期比6.0%減の7478億円、営業利益が同13.8%減の364億円、経常利益が同22.8%減の293億円にそれぞれ縮小した。シャープ自身は、ホームページ上で、この低迷の理由について「液晶や太陽電池などの主力デバイスは概ね順調に推移した。しかし、為替変動による売上影響額がマイナス348億円あったことや、国内携帯電話市場の低迷の影響を受け、携帯電話・通信融合端末の売上が前年同期から795億円減少した」と説明している。実際のところ、同社の4-6月の携帯電話の販売は、前年同期比39%減の299万台にとどまった。東芝、富士通、NECといった他の携帯電話機メーカーも事情は似たり寄ったりという。

 こうした携帯不況の主因と、メーカー各社が言い募っているのが、「割賦販売方式の導入」として知られる、携帯電話各社の新しい端末販売方式だ。従来、携帯電話会社は、メーカーに対し、数十万台単位で電話機の開発・納入を依頼し、これを一括して買い上げたうえで、販売奨励金をつけて流通チャンネルに乗せていた。奨励金額は1台に付き4万円前後が相場とされていた。

 これこそ、かつて10円端末や0円端末を可能にした原動力だった。携帯電話メーカーから見れば、この方式は、新商品の開発リスクや販売リスクがほとんどない。その一方、消費者からみても、少ない初期投資で端末を買い易い仕組みで、本来のニーズ以上の端末販売を実現する「打ち出の小槌」だった。