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インキュベーションの虚と実

お行儀が良すぎる今の起業家へ送る至極の提言!
「現実歪曲空間を放ち、圧倒的世界一を狙え!」
——国光宏尚(gumi社長)×小林清剛(前ノボット社長)×宮澤弦(ヤフー検索事業責任者)鼎談

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第37回・最終回】 2013年10月21日
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技術と事業化が断絶している
どれだけ世に広められるかの勝負

こばやし・きよたけ
前ノボット社長。1981年生まれ。2004年大学在学中に食料品の輸入事業の会社を設立。05年イン・ザ・カップを設立。珈琲豆や器具を販売する日本最大級の通販サイトを運営。09年ノボットを設立し代表取締役社長就任。11年8月KDDI子会社のmedibaに売却。13年9月末に退任。 Photo:DOL

小林 国光さんはコンテストの審査員をよくやっているけど、どう思います?

国光 僕がいくつか見たところでは、ヤフーに数億で買ってもらうのが関の山(笑)。しかも、10億円もいかない。

小林 それはビジネスモデルのコピーが多いからですか?

筆者 誰かが考えたビジネスの一部をコピーして、でもモノになっていない“部分コピー”に留まっているのも多い。米国でのオリジナルのビジネスモデルをよくみると、ものすごく徹底的に考えられている。

宮澤 「研究型」の場合、起業の種になる技術を研究者が持っていても、彼らはコンテストには出ないですよね。そもそも、興味がない(笑)。

くにみつ・ひろなお
gumi社長。1974年兵庫県生まれ。高校卒業後、中国、チベットなどのアジア諸国、北米、中南米など約30ヵ国を放浪。1996年中国復旦大学、2000年米国 Santa Monica College。04年アットムービーに入社。同年に取締役に就任。映画・テレビドラマのプロデュース及び新規事業の立ち上げを担当。07年gumiを創業し代表取締役に就任。 Photo:DOL

国光 日本で「研究型」のベンチャーで大きくなった例って、知っています? なかなか思い浮かばないけど、日本の研究者はレベル低いの? でも、日本の研究者たちはノーベル賞を受賞するくらい際立っている分野もあるし、そんなことないよね。何が足りないんだろう?

宮澤 僕が思うのは、事業化のところが断絶しているっていうことかな。商売にしようとか、これを多くの人に使ってもらおうという発想を持ってる人が、研究者のなかではめちゃくちゃ少ない。いまは良いテレビをつくっても売れない時代。良いものでも、自分の工夫でどれだけ広められるかにかかっている。

 ミドリムシをビジネスにしたユーグレナという会社のCTOの鈴木さんは、僕と同じ研究室だったんですが、大学のときから商売する気満々で、銀行出身の出雲さんと出会って成功した。

国光 良い技術があれば、言ってくれればオレがビジネスにするよ(笑)。大学や大企業でスゴイ研究しているヤツを、どうやって引っ張り出すかが問題だ。

 米国では出てくる。それをビジネス化する仕組みもある。日本でもスゴイ研究者を引っ張り出さないと。産学官というが、人材が出てない。

日本は空気を読みすぎる
世界一って言えない空気感は問題

みやざわ・げん
ヤフー検索事業責任者。1982年北海道生まれ。東京大学農学部卒。2004年シリウステクノロジーズを創業し、モバイル端末向けのGPS連動型広告配信事業を展開。10年ヤフーの買収により、同社に参画。 Photo:DOL

筆者 国光さんみたいに、ズバッと自らのビジョンを掲げる起業家は少ないよね。日本には遠慮がある。

宮澤 そう。それは思う。日本で一番残念なのは、「世界一になる」と言えない空気感ですよ。日本って空気を読み過ぎるんだと思う。

小林 「世界一になる」って言うこともできないんじゃ、絶対に実現することはない。起業のしやすさは、日本が世界で一番だと思う。資金は調達しやすいし、会社の売却も難しくない。その上、多くの大企業のスピードは遅く、ベンチャーの競争環境も緩い。遠慮しがちな空気感だけが、日本独特の「恥の文化」のせいなのか、ベンチャーにとってマイナスだと思う。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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