ここまで公開していいんですか、と言われた

鈴木 僕、ビジネス本って、好きじゃないんですよ。しかも、売れているビジネス本って、ちょっとインチキ臭いのが多いじゃないですか(笑)。申し訳ないんですけど、「あ、このくらいでいいんだ」という本も正直、あったんですよね。

『伝え方が9割』も、最初見たときは、「あ、また怪しい本だな」と思ったんです(笑)。でも、読んだときに「あ、これは本物の本だな」と思ったんですよね。ビジネス本というよりは、テキストであり、教科書ですよね。

 だから、ここまで人に教えてしまう、というところが、さっきおっしゃっていた、本を一冊書くということに対しての覚悟の現れだと思うんです。本当のテクニックを人に教えてしまえるかどうか。しない人も、多いんじゃないですか(笑)。

佐々木 実際、読者からハガキをいただいて、感想のところにこんなふうに書いてあったものがあったんです。ここまで明らかにしちゃって大丈夫ですか、と。それこそ、カレー屋でいえば、自分の店のレシピを全部公開しているように見える。ありがたいけど、本当に大丈夫なんですか、と。

 いろんなところに講演に行ったりしていますが、「こんなこと公開しちゃっていいんですか」という質問が来ることもあります。
 この本は、料理のレシピに例えたらダシの取り方なのです。ダシさえ、うまく取れれば、味噌汁もおいしくなるし、肉じゃがもおいしくなるし、おでんもおいしくなる。料理の基本のダシの取り方を公開しているのです。
 実際には、この後に料理のプロの領域があって、そういう細やかな技は、他にちゃんと持っているわけです。

 ただ、この基本中の基本が、世の中にこれまで出ていなかったわけです。それを公開したかった。みんなに知ってもらうことよって、それこそ就活でうまくいくかもしれないし、恋愛でうまくいくポイントになるかもしれないし、上司とうまくいくかもしれない。
 もちろん、根本の部分には、何を伝えたいか、ということが重要になるわけですが、加えて同じことを言うにしても、どう伝えるか、でまったく違ってしまうのだということを多くの人に知ってもらいたかった。

鈴木 僕は、これまで表現の世界に携わってきた人や、いろんな場で真剣勝負をしてきた人こそ、読んでみたらいい本だと思いましたけどね。
 なんか、自分が野生というか、勘でやっていることとかって、たくさんあるじゃないですか。自分で作ってきた方法論のようなもの。それが、この本を読むことで、「あ、やっぱりそうだったんだ」という確認ができると思うんです。
 僕自身も、それができたのが、すごく良かった。