自分の「天に誓って地面に刺せる剣」が「伝え方」だった
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師 上智大学大学院を卒業後、97年大手広告会社に入社。後に伝説のクリエーター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。日本人初、米国の広告賞One Show Designでゴールド賞を獲得(Mr.Children)。アジア初、6ヵ国歌姫プロジェクト(アジエンス)。カンヌ国際クリエイティブアワードでシルバー賞他計3つ獲得、AdFestでゴールド賞2つ獲得、など国内外51のアワードを獲得。郷ひろみ・Chemistryの作詞家としてアルバム・オリコン1位を2度獲得。
佐々木 僕もそうだと思います。自分で夢をつかみに行こう、と常に思ってきました。実は『伝え方が9割』は、僕の中では2冊目の本なんです。
鈴木 そうなんですか。
佐々木 一作目は出てないんですけどね(笑)。「本を書きたいなぁ」と思っていたのはずいぶん前で、「今すぐ行動しよう」というコンセプトでした。企画を考えて、僕が師匠だと思っている人に一度、見てもらったことがあるんです。
それまで、海外で賞をいただいたり、作詞をさせてもらったりしていましたが、自分から踏み出していなかったら、やっぱりできなかったことでした。自分の世界で生きているのは、それはそれで心地いいんですが、本当に面白いものをつかむには一歩踏み出さないと手に入らないと思うんですよね。
そもそも自分の幸せは何か、考えたことがあって、「お金を何億も手に入れる」とか「すごい好きな人と結婚できる」とか「作詞ができたら幸せになれる」なんて思っていた時期があったんです。
でも、あるとき、本当に作詞ができてしまった。しかも、ケミストリーという飛ぶ鳥を落とす勢いのアーティストに作詞を提供できた、これは、ものすごくハッピーだったんです。ところが、2ヵ月もすると、それが当たり前になってしまっていた。あの幸せ感は何だったのか、と思ったんですよね。
もっと振り返ってみると、広告業界にあこがれて、入社したときも、「やった!」と思ったわけです。ものすごく幸せだった。でも、1、2ヵ月もすれば、それも当たり前になってしまっていて。
つまり、いつになったら、自分の幸せはやってくるのか、と思ったわけです。それにようやく気づいたのが、30歳を過ぎてからでした。あるものを手にいれたら幸せになるのではない。つかみ続けることでしか、幸せでいられないんだと。
それまで幸せは「状態」だと思っていたんです。そうじゃなくて、自分が変わり続けることでしか、幸せであり得ない。つまり、「移動体」なんじゃないかと。
それで、これを本にしたいと思って一度書いてみたんですが、どうにも浅くて(笑)。しかも、師匠に話をしたら、ガツンと言われたんです。
「圭一、本というものは、自分の持っているものすべて賭けて、天に誓って地面に突き刺す剣のようなものだ」
これで恥ずかしくなってしまって。僕自身、今もそれは信じているところもあるわけですが、それこそ生き方については、考え抜いている人が世の中にたくさんいるわけです。じゃあ、自分の持っているすべてを天に誓って地面に刺せる剣は何か、と自分で考えてみたときに、「伝え方だ」と思ったんです。
それが『伝え方が9割』を書いたきっかけだったんです。