オリンピックを東京に決めたプレゼンの伝え方、DJポリスのやんちゃな若者を動かした伝え方、半沢直樹をはじめとするドラマの決めセリフ、「伝え方が9割」をはじめとするコミュニケーションの本の大ブーム。2013年は「伝え方元年」。伝えベタな日本人が、伝え方を身につけはじめ、社会現象となった年となりました。

国際舞台にて、伝え方で勝った日本

滝川クリステルさんのプレゼンは、日本の「お・も・て・な・し」の心を印象的にアピールしました。
写真:代表撮影/AP/アフロ

 2020年大会のオリンピック東京招致決定が画期的だったのは、東京にオリンピックが来ることだけではありません。伝えベタな日本がプレゼンで勝ったということが画期的なのです。この現代で、国際舞台にて日本が伝え方で勝った歴史的な出来事となりました。

 2016年大会のオリンピック招致で、日本は敗北しました。でもそのときと日本の持っている武器は変わっていません。「安全性」「施設」「十分な資金」。安全性という点でいうなら、2016年のほうが国際的には信頼度が高かったかもしれません。まったく同じものを持っていたのにも関わらず、今回勝利したのは、まさに伝え方でした。

 このプレゼンには人が票を入れたくなる技術が使われています。「相手の好きなこと」です。安倍首相のプレゼンでの締めのコトバは、要約すると以下でした。

「東京を選ぶということは、スポーツで世界をより良くしようとする国を選ぶことです」

 IOCの実現したいことは、その憲章にも書かれていますが、スポーツを通して世の中を良くすることです。つまりIOCが実現したいこと、好きなことを実現できると語ったのです。一方で強敵と言われていたマドリードの締めのコトバは、「私たちは選ばれる権利がある」と要望をそのままにしたものでした。もちろん締めのコトバだけで決まったのではありませんが、プレゼンの最後のワードは最も強烈な印象を植えつけるものでもあります。IOC委員からすると、票を入れたい気持ちにさせられたのは日本だったのでしょう。結果もそうなりました。