予想通りか、それとも意外か?
今年の日本人ノーベル賞受賞者はゼロ

2013年のノーベル物理学賞を受賞し、歓喜の会見を開く英エディンバラ大学のピーター・ヒッグス名誉教授 Photo:AFLO

 結果はあなたの予想通りだったろうか、それとも意外だったろうか――。

 2013年のノーベル賞受賞者が、10月上旬に発表された。受賞は物理学賞2名、化学賞3名、生理学・医学賞3名、経済学賞3名、文学賞1名、平和賞1団体の12人1団体だった。

 物質に質量をもたらす「ヒッグス粒子」の存在を予言した英エディンバラ大学のピーター・ヒッグス名誉教授(物理学賞)、資産価格の実証分析に貢献した米イェール大学のロバート・シラー教授(経済学賞)らは、日本でも有名だ。授賞式は、12月10日にスウェーデンのストックホルムなどで行われる。

 残念ながら、今年の日本人受賞者はゼロ。昨年「iPSブーム」を起こした、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授(生理学・医学賞)に続く連続受賞はならなかった。著書が海外でも人気を博し、ここ数年文学賞候補の1人に名前を挙げられていた作家の村上春樹氏は、今回も受賞を逃した。

 ダイナマイトの発明で富を築いたスウェーデンの実業家、アルフレッド・ノーベルの遺産を基に、1901年に創設されたノーベル賞は、以来100余年間にわたり、「世界で最も権威のある賞」の名前をほしいままにしている。

 その「権威」を手に入れられる人はごくわずかだ。ある分野で世界に認められる実績がありながら授与されない人もいれば、知名度がそれほど高くなくても授与される人もいる。「運」と言ってしまえばそれまでだが、世界中の著名な科学者や文学者は、6つの賞に熱い思いを馳せている。「ノーベル賞受賞者」という響きには、まさに格別なものがある。

 そこで気になるのが、なぜ日本人は毎年連続でノーベル賞を受賞できないのか、ということだ。これはノーベル賞に関する取材の過程で、記者が抱いた素朴な疑問でもある。授賞式を前にして、世間には「今年は日本人が受賞できなくて残念」という声が少なくない。

 そもそも、国として特定の賞の受賞者数を競うことはナンセンスに思えるが、これほど注目度の高い賞になると、そうも言い切れない。今やノーベル賞受賞者の数は、その国の国力を測る指標とも言われているからだ。日本政府も2000年代初頭、受賞者の数を今後50年間で30人増やす目標を掲げ、重点産業に政府研究開発投資を行うことなどを検討している。