ダイヤモンド社刊 上下巻各1800円(税別) |
「自らの事業は何かとの問いに答えるほど、簡単で分かりきったことはないかに思われる。だが、この問いに答えることは、つねに難しく、思考と検討なくしてできることではない」(『現代の経営』)
事業が何かを決めるのは顧客である。社名や定款ではない。顧客が満足する欲求が事業を決める。
事業は何かとの問いに対する答えは、事業の外部、すなわち顧客や市場の観点から事業を見ることによってのみ得られる。
企業が社会の機関である以上、事業の目的は社会に求めなければならない。
事業の目的として有効な定義はただ一つである。顧客を創造することである。顧客は、神や自然や経済的な力によって創造されるのではない。事業家によって創造される。
事業家の行為が欲求を有効需要に変えたとき、初めて顧客が生まれ、市場が生まれる。
企業が自ら生み出していると考えるものが重要なのではない。企業の将来や成功にとって、それらのものは重要ではない。顧客が買っていると考えるもの、価値とするものが、決定的に重要である。
それらのものこそ、事業が何であり、何を生み出すかを規定し、事業が成功するか否かを決定する。
「顧客が事業の土台であり、事業の存在を支える。顧客だけが雇用を創出する。社会が企業に資源を託しているのは、顧客に財やサービスを供給させるためである」(『現代の経営』)