大川小検証委で柳田邦男さんが根拠の欠如を指摘 <br />遺族が「戦慄を覚えた」有識者ヒアリング第6回の会合では、外部の有識者5人による、「事実情報に関するとりまとめ」へのヒアリングが行われた
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東日本大震災の大津波で、児童74人と教職員10人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校の事故検証委員会が迷走している。

第三者による検証のスタートから9ヵ月近くが過ぎた。だが、明らかにされない重要な事実情報も多く、一向に信憑性のある報告が揃わぬままだ。検証委員会側は、情報を精査してから最終報告に盛り込むと繰り返し弁解しているが、検証を見守る遺族たちからの信頼は、すでに失墜している。

第6回検証委会合以前から
遺族の不満は頂点に達していた

 遺族は9月30日に文科省に出向き、大臣宛の「意見書」で、検証委の現状に対して事実上の抗議を伝えた。求めたのは、子どもたちが命を落とさなければならなかった核心にきちんと触れることだった(第27回『大川小の遺族がついに文科省へ意見書を提出「検証委への不信感」に義家政務官はどう回答したか』参照)。

 ところが、10月20日に第5回検証委会合で公開された「事実情報に関するとりまとめ(案)」には、当日の避難行動の調査は、途中経過のみしか記載されていなかった(第28回『「山へ逃げよう」の大川小児童証言は“精査中”!?教員の会話は「検証委とりまとめ案」に盛り込まれず』参照)。

 その1週間後の10月26日に行われた検証委事務局主催の報告会は、当然ながら紛糾し、5時間にわたった。

 遺族たちは、これまで再三にわたって求めてきた、事故当日の避難について教職員間でどのような議論があったかや、6年生の児童が「山さ逃げよう」と教員に言ったという証言が、とりまとめ案に盛り込まれていない点がおかしいと主張。また、多くの証言が「精査中」と釈明する検証委に対して、偏った証言のみを載せるのではなく最低でも両論併記することや、記載した証言とデータの根拠を記載するなどの基本的な対応を求めた。

 その1週間後の11月3日には、外部の5人の有識者から、検証への意見を聴取する、有識者ヒアリングが第6回会合内で実施された。

 有識者に対してはあらかじめ、これまでの検証委の全会合の資料と、会合と会見の議事録、遺族向け説明会の記録が、その都度提供された。これらだけでも膨大な量となる。

 加えて、中途半端な内容のままの「事実情報に関する取りまとめ」等も提供され、最後には、1週間前の報告会で遺族が検証委員会に求めた異議や疑問もまとめられ、3日前にメールで送られた。

 検証委の説明によると、有識者から意見を聞く目的は、今後さらに収集・整理すべき追加情報はないか、どのような視点で分析を行うべきか、今後の再発防止に向けた提言に関する意見を聞くためという。