12月上旬にもユネスコの『無形文化遺産』に登録される見込みとなった「和食」

 和食がユネスコの『無形文化遺産』に登録される見込みになった。すでに様々な形で報道され、記事からはどれも祝祭ムードがただよう。でも、僕には喜んでいていいのかな、という気持ちと、一連の報道に対する違和感がある。

 違和感の正体はどの記事も『「和食」とは何か』はっきりしないことだ。もっと言えば正確に伝えていないように感じるものもある。

 例えば「『世界遺産』登録でも絶滅寸前の和食」(日経ビジネスオンライン2013年10月31日)という記事だ。

 大ざっぱに内容をまとめると、

「(登録される見通しとなった)和食は危機に瀕している。その理由としては料理店が高額すぎるため、和食が身近でなくなったことがあげられる」

 ということになる。ここには多少の誤解があるのだ。

曖昧で定義のなかった「日本料理」が
『和食』として登録されるまでの紆余曲折

 はじめに『無形文化遺産』に登録されるにいたった経緯について触れておきたい。

 ユネスコの『無形文化遺産』というのは、2006年に条約が発効された比較的新しい枠組みだ。建築物などの保護を目的とした『世界遺産』とは異なり、民族文化財、フォークロア、口承伝統などを対象とするものである。日本からはすでに能や歌舞伎など、21項目の文化が登録されている。

 『無形文化遺産』登録へ向けた背景としては、『和食離れ』があるとされ、はじまりは京都の料理人たちがつくった『日本料理アカデミー』という団体が「近年の和食離れを食い止めよう」と無形文化遺産登録を提案したことだった。

 当初は大きな動きにはならなかったが、風向きが変わったのにはいくつかの理由がある。