ピーター・ソンダーガード
ガートナー
シニア・
バイス・
プレジデント
リサーチ部門
最高責任者

 資産集約型企業のCEOは、自社の既存製品が生み出すデータを開放し収益化することで、既存製品の価値を高め、ひいては新たな収益拡大の機会とすることができる。

 誰しも気になるところだろう。

 例を挙げてみよう。あるエレベーター管理会社は自社で収集したデータから、不動産物件のオーナーに販売する商品を生み出した。エレベーターのデータが売れる? なんて革新的なアイデアなんだ! 我慢できずにしゃれてしまった。
(訳注:英語で「アウト・オブ・ボックス」(革新的アイデア)という慣用表現に、エレベータのかごを指す「ボックス」をかけている)

 詳しくは次のとおり。このエレベーター管理会社は、自社で管理するエレベーターが稼働するオフィスビルで、各階の乗降者数を記録している。そのデータと各テナント企業が公開している財務データとを組み合わせる。すると業績拡大中でフロアを拡張する可能性が高い企業が特定でき、物件のオーナーに助言できるのだ。

 逆に、あるテナント企業に訪問する人数の減少と財務実績の低下に相関があれば、オーナーに注意を喚起することもできる。賃料の滞納や契約を打ち切られる恐れがあるという警報となる。こうした洞察は、物件オーナーにとって大金を支払うに値するものだ。

 では、このエレベーター管理会社は、どのようにして既存の資産から新サービスを生み出すにいたったのだろうか? 「アハ!」という一瞬のひらめきではない。これは、的を絞ったイノベーションの成果なのだ。

 ここにCDO(チーフ・データ・オフィサー=最高データ責任者)の役割がある。CDOは、既存の有形資産から新たなデジタルの収入源を見出すことがその役目だ。既存の資産にどんなデータが隠れているのかを知らない組織を、実際に知っていることに対し、何らかの行動を起こす組織へと導いていく存在だ。

「また、新手の最高何とか責任者か?」「CEOの取り巻きがまた一人増えるのか?」などという、みなさんの懸念ももちろん承知している。だが、今回は違う。

 CDOを最も活かすには、製品開発をすでに担っている幹部の直接的なサポート役として配置することだ。そうすれば、CDOは具体的な資産や製品に焦点を絞り、それらが生み出すデータや情報、あるいはそれらに関連したデータや情報の価値を引き出すことができる。さらにCDOは組織全体の協力を取り付け、既存の製品開発チームが一番得意なこと――すなわち製品の開発に集中できるよう尽力しなければならない。