「ついに新聞の死がやってきた」――。
最近、アメリカのメディアは、この身内の話題で盛り上がっている。インターネットの普及で新聞や雑誌の存続が危ぶまれるようになって久しいが、ここ数ヶ月で火急の問題の如く報じられているのは、あの大新聞「ニューヨーク・タイムズ」の経営破綻リスクがまことしやかに語られ始めたからである。
ニューヨーク・タイムズ危機説は、「ザ・アトランティック」誌が今年1-2月号で「ニューヨーク・タイムズの終焉」という記事を発表してから高まった。「ザ・アトランティック」は、そうそうたる執筆陣がアメリカ政府の政策やビジネスの動向を評論するインテリ雑誌。その信頼性の高いメディアが、「今年5月までに資金調達できるかどうかがで、ニューヨーク・タイムズの存続が決まる」と報じたのだ。
ニューヨーク・タイムズは、年々購読者と広告収入を失い続けている。同社の発表によると、2008年度はウィークデイの購読者数が3.1%減った。2008年第4四半期(10~12月)の収益は、前年度同期から48%減。折からの経済不況が収益源にさらに打撃を与えた格好だ。
2008年末時点での負債は11億ドル。ザ・アトランティック誌によれば、ニューヨーク・タイムズは、5月に返済期限を迎える4億ドルの調達に苦渋している。
実際、一部報道によれば、1月末の第4四半期の業績発表後、ニューヨーク・タイムズ社はメキシコの富豪投資家のカルロス・スリム氏から利息14%で2億5000万ドルを借り入れた上、傘下のニュー・イングランド・スポーツ・ベンチャーズを売却する準備に入った。ニュー・イングランドは、ボストン・レッド・ソックスとフェンウェイ・パーク・スタジアム、ケーブルのスポーツ局を持ち、この資産価値は1億4000万~1億6600万ドルといわれる。さらに傘下にあるボストン・グローブ紙の売却もうわさされている。
加えて3月9日、同社はマンハッタンの中心地に保有する自社ビルの所有権を売って、2億2500万ドルを調達した。このビルはイタリア人の有名建築家レンゾ・ピアノが設計、2007年に7億ドルをかけて完成したばかりのものだ。ニューヨーク・タイムズ社はこの52階建てビルの58%を所有していた。