先週(土)に行なわれた2010年南アフリカW杯アジア最終予選、日本―バーレーン戦は後半2分、中村俊輔がFKを決めて、1-0で日本が勝利した。

 アジア最終予選には10ヵ国が進出。5ヵ国ずつふた組に分かれてホーム&アウェーの総当たり戦を行ない、各組2位までがW杯出場権を得る。この試合が始まる時点で日程は半分を消化。日本が入った「グループ1」は、1位オーストラリア(勝点10)、2位日本(勝点8)、3位バーレーン(勝点4)、4位カタール(勝点4)、5位ウズベキスタン(勝点1)で、オーストラリアと日本が抜け出している状況だった。

 日本がバーレーンに勝てば勝点は11になる。この試合の時点では、同日に行なわれたカタール-ウズベキスタン戦の結果は判らなかったが(結局ウズベキスタンがカタールに4-0で勝ち、3位以下は3ヵ国が勝点4で並んだ)、ここで勝てば3位以下には勝点で大差をつけ、W杯出場に大きく前進することになる。が、万が一負ければ勝点差は1になり、2位争いは混沌としてくる。その意味で重要な試合であったことは確かだ。

 とはいえバーレーンには昨年9月のアウェー戦で勝っているし、必ずしも当てにはできないがFIFA(国際サッカー連盟)が発表する世界ランキングでは日本が35位なのに対し、バーレーンは67位。そう危機感を持って見る試合ではない。

視聴率を稼ぐために、
“危機感”を演出?

 にもかかわらず地上波の中継を担当したテレビ朝日は試合前、視聴者の危機意識を煽った。恒例の「絶対に負けられない試合」というキャッチフレーズこそやや控え目にしていたが、番組のホームページではバーレーンを「因縁の天敵」と呼び、試合を「運命の分岐点」と位置づけた。

 国際大会での日本代表の試合を中継する民放は最近、こうした“仕掛け”をよくする。相手国の強さを強調し、日本は苦戦必至と視聴者に思わせるのだ。WBCでもそうだった。宿敵・韓国はもちろん、第2ラウンドで対戦することになったキューバ、アメリカにはどれだけ凄い選手がいてどんな勝ち方をしてきたのか、メジャーのスター選手の場合は高額の年俸まで含めて、こと細かに紹介していた。

 視聴者はどちらかというと日本が劣勢でハラハラドキドキする状況でないと応援する気が起きない→その気になってもらわないと中継は見てくれず視聴率は稼げない、と民放のスポーツ中継担当者は考えているようだ。

 一方、そうした仕掛けをほとんどしないのがNHKである。