【技法3】
本のコピーを貼って読み返す
何かを貼って読書ノートをつくる方法として、意外と効果的なのが、本をコピーしたものを貼ってしまうことです。マーキングを済ませた本から、1、2ヵ所の見開きのコピーを取った上で、切り抜いてノートに貼り、コメントを書いたりマーキングしておく。
何の工夫もない方法ですが、その本の書体(フォント)や文字組、レイアウトなどがそのままノートに残せることで、「こういう本を読んだ」という印象がより強く残るようになります。
これは、使い終わった参考文献のコピーをそのまま捨てるのはもったいないと思って始めたことです。こんな横着をしていいのか、書き写した方がいいのではないか、とも思ったのですが、やってみると案外、効果的だとわかりました。
まず、単純に持ち歩いているノートに、お気に入りの本のベストなページが収録されているというのは、気分のいいものです。また、コピーは手書きの抜き書きより読みやすいので、「ノートを取り出したときについでにパラパラと読む」というクセがだんだんついてきます。
読んだときは、ペンでマーキングをして、コメントを書き加えておきます。すでにボールペンでマーキングされている場合、2回目はサインペンでするなど、線を引くペンを毎回変えると、貼ってある文章をどのくらい読み込んだのか一目でわかるようになります。
問題は、コピーする文章をどう選ぶかです。結論から言うと、もっともその本らしいページ。「このページこそ、この本の代表だ」と思えるようなところです。たとえば、最近読んだ三島由紀夫のエッセイ『若きサムライのために』は、いい本だったのでマーキング箇所は10ヵ所以上にもなりました。しかし、ノートに貼ったのはたった1ページのコピーだけです。それは、三島が福田恆存との対談で、死の覚悟について、
「ふだんから覚悟があるつて言つてゐるのは、ちよつとにせものくさい」
と言っているところです。ここが一番、三島由紀夫の作家性が表れていて、その後の死までも暗示されているように感じたからです。このように自分で納得のいく「1冊を象徴する文章」を選ぶことができると、読み返すことで、その本の他のページに書かれていたことまで芋づる式によみがえってきます。わずかな時間で、数行を読み返すだけで、さまざまなことについて考えを巡らすことができるのです。