菅原 そうですね。僕がより長くいたアーサー・D・リトルでは、時代的にもターンアラウンド系のプロジェクトが殆どなく、新規事業開発の案件を沢山やっていたせいか、バランスシートの構造をどういじろうかというイシューは殆ど経験しておらず、様々な手法を使って新規事業の収益シュミレーションを行う事が圧倒的に多かったです。
田中 アセットを軽くしたいといったバランスシート固有の問題については、事業会社も戦略系のコンサルティングファームにお願いしないでしょうから。
菅原 そうですね。事業戦略に関する提案を出すまではコンサルティングしますが、そこから先どのように投資やファイナンスを実行するかという点については投資銀行が手がけることになりますよね。
保田 こうして菅原さんのお話をうかがっていると、結局、菅原さんはCFOに相応しい素地が十分にありましたという、そのひと言になってしまいますね。
菅原 そうですか(笑)。
コンサルタント出身のCFOを部下がフォロー
保田 菅原さんの部下の人たちは、コンサルタント出身の人が多いわけではないと思うんですけれども。
菅原 違います。私の部下は経理をはじめとした経営管理畑出身が多いので、私のふわふわした頭でっかちの部分を部下がきちんとフォローしてくれています。だから、私が経営陣の議論を咀嚼して現場とつなぐことができるようになっています。
保田 財務を担当している現場の人たちのジョブローテーションはやっていますか?
菅原 役員の担当替えはやっていますが、経理・財務部門のスタッフに関しては、あまり動いていませんね。
保田 言いにくいんですが、アイスタイルへの入社を希望する人の中で「私は経理や財務をやりたいです」と言う人はきわめて少ないと思うんですが。
菅原 そうですね(笑)。@cosmeと財務は直接つながりにくいかもしれません。当社は事業の性格上、女性社員が多いんですが、当社の経理・財務部門についても女性として働きやすい環境を求めて来る人が少なくないように思います。
田中 職務として何をやるかを求めるより、アイスタイルのビジョンに共感して入ってくれる人が多いんですね。
菅原 ビジョンと会社の居心地の良さでしょうか。当社は、女性が多いのが当たり前なので、女性だから、と分けて何か特別なことをやっていたりはしないところがありますね。
田中 CFOが投資家やアナリストといった株式市場に関わる人たちとの対話を通じて得た会社に対する市場の期待を事業戦略に携わる社内の人たちに翻訳して伝えるという作業は大変だと思います。菅原さんは、そのような社内のコミュニケーションで、どのような苦労をされていますか? また、それを克服するために、どのような工夫をされていますか?
菅原 当社の財務という面では、今はそんなに重いテーマではありません。銀行借入もありますけど、現預金はそこそこの規模もあるので、資金繰りでの苦労も最近はありません。2008年くらいまではほとんど自転車操業で大変でしたが、それも単なる資金繰りの問題ですから。
したがって、社内での翻訳作業といった苦労はそれほどありません。それに、会計やファイナンスの基本知識を持っているコーポレート本部長が私とともに毎週の経営会議に出席していますので、彼が現場との間をつないでくれています。彼は当社に入社して8年になりますので、コミュニケーションもスムーズで本当に助かっています。コーポレート本部長といっても、彼は開示関係や税務、何でもこなして幅広く現場の最前線で活躍してくれています。
田中 その方のバックグラウンドはどんな感じなのでしょうか?
菅原 事業会社の経理の経験が長いです。非上場の会社や東証上場企業での実務経験もあり、国際会計基準の知識もあります。