自分の夢や志を実現するには「いつか起業を!」ではなく「いまから起業準備を!」のスイッチを入れることが肝心。上場準備コンサルタント・監査役としてユニクロ、アスクル、UBICなど多くの成長企業の躍進を支えてきた安本氏が、現場を知り尽くした立場から起業の秘訣を明かします。この最終回ではビジネスを育てるための「資金繰り」について解説します。
芽を出した事業には資金が必要になる
業種・業態・規模の差こそあれ、事業を始めた直後にはお金はあまりかかりません。というより、お金がないのでほとんどお金をかけられないというのが実情でしょう。タネを蒔いて育てる段階では、創業者・起業家の自己資金が中心となります。
しかし事業萌芽期から事業生育期にかけては、どうしても「設備資金」と「運転資金」が必要になってきます。すべて自己資金で賄える金額ならいいですが、それを超える場合は他人や金融機関に借入を申し込まなくてはなりません。
起業家以外の第三者に関係してくる事業であって、その第三者に出資してもらえるようなビジネスプランが描けるのであれば、出資をお願いするのも悪くありません。地方都市に観光施設を作るので、地元の人々に出資を募るという事例が実際にありました。
しかし、「応援するぞ」と言ってくれていた仕入先から、起業した途端に代金の前払いを要求された、という例も珍しくありません。そのくらい現実は世知辛い、というよりも自分のことで精一杯の会社が多いのでしょう。そんなことで恨んでいては始まりません。
起業したてはケチケチ戦法で行くにしても、先立つものはお金ということで、まずは起業までに貯めた自己資金があるかどうか。続いて、自己資金だけで足りなければ両親や親類縁者から借りるか、銀行などの金融機関から借りることになります。
まずは自治体や公的金融機関の制度を検討する
銀行借入する前に、まずは自治体や公的金融機関の資金を利用することを検討すべきです。インターネットで調べることもできるし、参考文献は数多く出版されています。たとえば、日本政策金融公庫(略称:日本公庫)では「創業の手引」という実務に役立ちそうなパンフレットを窓口で配布しており、全国152支店の「創業サポートデスク」で起業の相談に応じてくれます。