アベノミクスの成功を証拠づけるように、12月調査の日銀短観が改善した。中でも、中小企業の景気実感がかなり良くなっているという。これは本当に信じてよいことなのだろうか。

 少し解説しておくと、日銀短観は企業に対して景気の実感を「良い」、「さほど良くない」、「悪い」の三択で答えてもらい、「良い」と回答した割合と「悪い」と回答した割合を差し引いて、業況判断DIとして表示している。

 12月の調査では、業況判断DIについて、大企業・中堅企業・中小企業、製造業・非製造業のいずれもがプラスのDIに転じた。これは「良い」という回答が、「悪い」の回答を上回っていることを意味する。本当に、「良い」という企業数が多数派になったことを真実として受け止めてよいのだろうか。

 筆者が驚くのは、中小企業のうち、非製造業の業況判断DIまでがプラスになったことだ。中小企業・非製造業のプラスは、実に21年ぶり。1992年3月調査以来のことである(図表1参照)。1990年代にバブルが崩壊してから間もなくの状態をまた取り戻しているという感覚は、にわかに信じ難い。一体、この変化は本当なのだろうか。

浮上してきた小売業

 中小企業・非製造業のうち、個別の業種の業況判断DIを調べると、個人消費周りが改善している特徴があることがわかった。

 特に、従来に比べて改善しているのは小売業である。卸売業、サービス業、運輸・郵便業と小売業の4つについて、長期時系列のデータで業況判断DIの推移を見てみた(図表2参照)。