今や中国は国際関係の最大の課題に
防空識別圏設定を巡る日米の温度差
現在の国際関係の最大の課題は、中国とどう向き合うかである。
中国は急速な経済成長を達成し、世界第二位の経済大国として各国との相互依存関係を深化させた。中国の広大な市場や安価な輸出品は大きな魅力であり、世界経済を牽引する力となっている。
その一方で、共産党一党独裁の下で法の支配、基本的人権といった普遍的価値が十分尊重されていないことや、ここ数年の対外的攻勢は近隣諸国に大きな不安を生んでいる。
特に、南シナ海や東シナ海、さらには尖閣問題などで中国の「力を背景とし、現状を変更しようとする一方的行動」は大きな摩擦を生んでいる。まさに国際社会にとって、中国との経済的相互依存関係と安全保障面での緊張関係という二律背反的な関係をどう調整していくかという、大変困難な問題に直面しているわけであるが、各国の対中政策には違いが目立ち始めている。特に日米の違いには懸念を持たざるを得ない。
先般中国が唐突かつ一方的に防空識別圏を宣言した際、日米はこれを強く非難した。米国はケリー国務長官やヘーゲル国防長官が非難の声明を出したほか、B52戦略爆撃機を訓練飛行させ、米国の軍事活動に中国の防空識別圏にかかわる声明は、一切影響を与えないことを鮮明にした。
しかし、来日したバイデン副大統領との間では防空識別圏の「撤回を求める」日本の方針が日米共通アプローチとして確認されなかったほか、民間航空機の飛行について飛行プランの提出をさせない方針を決めた日本当局と、提出を慫慂(しょうよう)した米国当局の差は明らかとなった。
バイデン副大統領は、日本訪問後の中国訪問で習近平国家主席と5時間半の会談を行ったと伝えられているが、中国側に防空識別圏の撤回を求めたとは伝えられていない。