中国政府は政治的な意図を表明するとき、独特のサインを発する。これは多くの日中関係専門家が指摘することだ。たとえば今年9月、毎年のように放送される抗日ドラマは、ほとんど放送されなかった。これをもって、ある専門家は「中国側の日本と関係修復したいという思いが見える重要なサインだ」と指摘している。今年10月に北京で開催された言論NPO主催の「東京—北京フォーラム」。日中関係が最悪の状況下で、不戦の誓いを柱にした「北京コンセンサス」に合意、発表した。合意に至る過程は困難を極めた。そんななかで、合意に漕ぎ着けられたのは、中国側が日本側へ送ったサインを、日中双方の主催者が感じ、それを頼りに困難を乗り越えることができたからだった。(取材・文/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)
NPOが中心となってアレンジした
「民間外交」のプラットフォーム
戦後最悪と言われる今の日中関係。政府間外交はまったく機能していない。そんな状況下で、10月25日、26日、2日間に渡って言論NPO主催の『第9回東京—北京フォーラム』が北京で開催された。
このフォーラムは政府がさまざまな問題を協議、交渉する「政府間外交」とは違い、民間団体である言論NPOが中心となってアレンジされた「民間外交」のプラットフォームだ。参加したのは、日中両国から官僚OBや大学教授、各研究機関に所属する専門家、ジャーナリストらだ。
今回のフォーラムには中国側からは唐家璇・前国務委員・中国国際経済交流センター顧問・中日友好協会会長、蔡名照・国務院新聞弁公室主任が、日本側からは加藤紘一・日中友好協会会長、木寺昌人・駐中国特命全権大使が講演、挨拶に駆けつけた。
26日には、「どんな対立や課題においてもその解決を軍事的な手段に求めない」という「不戦の誓い」を柱とした、「北京コンセンサス」を採択した。これは今年の日中関係のなかで、唯一と言っていいほど前向きな話題で、最大の成果だと言えるだろう。