宮脇さん最後の
英国旅行の写真も収録

 これらの海外鉄道旅行は、JTBが「宮脇俊三さんと行く鉄道旅行」を公募し、読者参加のグループ旅行に仕立てたものだったそうです。

 団体旅行は好まれなかった先生だが、和気あいあいのこのツアーだけは別で、ご機嫌かつお元気であった。(86ページ)

 一人旅の作家、という印象の強かった宮脇さんですが、本書の写真を見ると、とても楽しそうで少し意外な感がありました。櫻井さんの写真が宮脇さんに対する愛情に満ちているからかもしれません。

 本書に収録されている1999年の英国旅行が宮脇さんの最後の海外紀行となりました。櫻井さんはこう書いています。

 かくして、カンタベリー東駅に到着し、英国国教会の総本山カンタベリー大聖堂へ。宮脇一行は「巨大な教会の中を善男善女になって」英国の旅を締めくくったわけだが、奇しくも、この英国が先生最後の海外旅行となり、英国随一の豪華列車「ブリティッシュ・ブルマン」が最後の列車となった。もちろん、もっと長生きしていただきたかったが。
「最後は鉄道発祥国で締めくくりたいものですな。もう一度、イギリスに行きたいなぁ」という希望は叶えられたのだから、これでよかったと私は思っている。(109ページ)

 本書は、開高健(1930-89)の名作『オーパ!』(集英社文庫、1981)シリーズですべての釣行に同行した写真家、高橋昇さん(1949-2007)が残したフォト・エッセイ『男、が、いた、開高健。』(小学館、2005)に並ぶ、写真家による伝説的ライターの記録となりました。

 なお、二つの名作紀行『オーパ!』『時刻表2万キロ』の初版単行本は、同じ1978年に出版され、現在も文庫で購入することができます。

(次回は2013年1月9日更新予定です。)


◇今回の書籍 39/100冊目
『宮脇俊三と旅した鉄道風景』

鉄道の伝説的ライターに同行した<br />写真家によるフォト・エッセイ

宮脇俊三×櫻井寛。鉄道作家最強のコラボレーション。著者は、8年間5回にわたり、宮脇俊三氏の晩年の海外鉄道旅行に同行したフォトジャーナリストの櫻井寛。打ち解けた人にしか見せない旅先での宮脇氏の素顔や紀行文では語られなかった逸話を交えながら、宮脇氏の著作に描かれた思いでのシーンを櫻井氏の「旅ごころ」溢れる写真で蘇らせた。

櫻井寛 著

発行所 ダイヤモンド・ビッグ社
発売元 ダイヤモンド社

定価(税込)2,100円

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