宮脇さんの鉄道旅行の一部を
フォト・エッセイでまとめた書

 本書『宮脇俊三と旅した鉄道風景』(発行所=ダイヤモンド・ビッグ社、発行元=ダイヤモンド社)は、1992年以降の取材旅行に同行撮影した写真家・櫻井寛さんのフォト・エッセイです。

『時刻表2万キロ』をはじめ、初期の宮脇さんの著作に写真は入っていませんでした。すべての情景を文章だけで表現していたのです。しかし、どんどん仕事が増え、雑誌の要請もあって写真家との取材旅行が増えていきます。

 櫻井寛さんは1954年生まれ、昭和鉄道高校、日大芸術学部を卒業後、世界文化社の写真部に勤務ののち、90年に退社して鉄道写真家となりました。「地球の歩き方・鉄道旅行シリーズ」全8巻(発行所=ダイヤモンド・ビッグ社、発行元=ダイヤモンド社)に写真や文章を寄せ、なかでも『スイス鉄道の旅』『イギリス鉄道の旅』『北米大陸鉄道の旅』の表紙は櫻井さんの作品が飾っています。

 櫻井さんが宮脇さんと初めて取材旅行したのはスイスでした。

鉄道の伝説的ライターに同行した<br />写真家によるフォト・エッセイ宮脇さんの著作に関連している写真がところどころに掲載されています。
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 忘れもしない車内での最初の一言は、「バッファーはいいですなぁ。日本の列車と乗り心地がまるで違う」であった。SBB(スイス国鉄)ルツェルン行きがチューリヒ中央駅を発車した直後、目を細められたのだ。
「未知の鉄道に乗りに来て、それが動きはじめたときの感触は言うに言われぬものがある」(『夢の山岳鉄道』)。旅は始まった。(8ページ)

 ちなみに、バッファーは連結器の緩衝器部分のことです。櫻井さんが引用している『夢の山岳鉄道』は1993年に日本交通公社から出版された宮脇さんの著書です。

『宮脇俊三と旅した鉄道風景』の主要部分は、この1992年のスイス旅行に始まり、94年スイス一周の旅、95年ヨーロッパ高速鉄道の旅、98年アメリカ西海岸鉄道の旅、99年英国取材旅行(「最終便――再び英国へ」)を、同行した写真家の目で振り返ったものです。ほかに『時刻表2万キロ』で最後に乗った足尾線(現わたらせ渓谷鐡道)など、宮脇さんゆかりの国内の写真も付されています。