2013年は日本が大きな転換に踏み切った年だった。経済面では何と言っても「アベノミクス」に尽きる。黒田日銀が「異次元金融緩和」に踏み切り、10兆円を超える補正予算も手伝って、日本経済は回復基調に入った。さらに、2020年の東京オリンピック開催も決定、楽天の田中将大投手が24連勝という前人未踏の大記録を打ち立て、同球団は初の日本一にも輝いた。総じて日本経済には明るい雰囲気が戻りつつある。一方、安倍首相は年の瀬になって靖国神社に参拝し、日中、日韓との関係改善はさらに遠のいたようにみえる。
さて、新年はまず4月に消費税増税が実施される。景気への影響が懸念されるものの、財政再建には道筋がついたとは言い難い。さらに緊張高まる東アジア情勢に、安倍政権はどう対処するのか。2014年は午年。軽やかに駆け抜けることができるのか、暴れ馬のごとき年になるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、新年を予想する上で、キーとなる5つのポイントを挙げてもらった。
三菱総合研究所政策経済・研究センター・チーフエコノミスト。 ジョージタウン大学公共政策大学院修士課程修了、1994年日本銀行入行。日本銀行では海外経済調査、外国為替平衡操作、内外金融市場分析などを担当。2009年三菱総合研究所入社。専門はマクロ経済、国際金融。社会保障審議会年金部会委員、年金財政における経済前提と積立金運用に関する専門委員会委員等。
①米QE3縮小開始の国際資金フローへの影響
14年の世界の金融経済にとって、大きな注目点の一つは米国の金融政策だ。12月の米連邦公開市場委員会では、量的緩和(QE3)の縮小が開始される一方、フォワードガイダンスが強化され、米国の低金利政策の長期化期待が広がった。
しかし、米国経済の回復が続けば、14年後半には雇用や物価の条件が整い、低金利政策の継続期待も後退していこう。その際、国債市場のボラティリティ(価格変動)が高まり長期金利が急上昇すれば、世界の金融経済にも影響が伝播するリスクがある。
なかでも懸念されるのは新興国経済だ。とくにインド、ブラジル、インドネシアなど経常赤字国は、自国通貨安によるインフレが誘発されやすい経済構造ゆえ、資金流出によるダメージは相対的に大きい。13年は夏場にかけて新興国市場から資金が流出する動きがみられたが、14年にもこうした動きが再び起きれば、新興国は追加利上げを余儀なくされ、景気も一段と減速する可能性がある。