ダイヤモンド社のビジネス情報サイト

地方からITエンジニアがいなくなる

赤井 誠 [MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長]
2014年1月8日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
3
nextpage

ブラック企業のイメージはぬぐえるか

 あるいは、今から地方でエンジニアを増やすことで対応する方法もあるだろう。それも簡単ではないだろう。前出のIDC Japanの市場推計によれば、SI事業が属するITサービス市場規模は、引き続き成長が継続し、今後も低成長ながらも、2012-17年の年間平均成長率は1.5%で成長し、2017年には、5兆3151億円に達する。こうした成長産業であるにもかかわらず、近年、SI事業は、若者たちにとって極めてイメージが悪い業界の一つになってしまっているのだ。

 SI業界は、2013年の流行語ともなったブラック企業の1つとして取り上げられることも多い。ブラック企業の定義は、人によってさまざまだが、労働関連法を無視・軽視、あるいは法の網を悪用して従業員、特に若者に低賃金で長時間労働を強制し、使いつぶす企業を指すといったところだろう。SI業界は、エンジニアの長時間勤務などの問題もあり、ブラック企業とされることが多い。実際に、筆者の知人の中にも、正月以外はまったく休みなく働き続けた人が複数人以上いる。残業代も支払われない企業で働いた知人もいる。

 確かに、このような改善を必要とするSI事業者が多数あることは事実である。ただ、一方で、このような問題が起きないように、会社をあげて取り組んでいるところも多数知っている。にもかかわらず、ほとんどすべてのSI事業者はブラック企業というような印象となり、実に評判が悪いのだ。

 また、エンジニア志向の若手は、SI事業よりも、メディアが話題にすることの多いゲーム業界やウェブサービス業界に目が向くことが増えている。これらの業界は、消費者向け商品を開発し、主に自社ブランドで販売することが多いため、一般的に認知されやすく注目を浴びやすい。そして、優秀なエンジニアを集めたいという意図から、あえて優れたエンジニア個人にスポットをあてたPRに力を入れる。部外者がそれを見れば、エンジニアを大切にしているという印象を受けるだろう(もちろん、実際に大切にしている企業も多い)。

 一方、SI事業者は、主に他社から依頼を受けて開発・運用する受託開発を主力にしていることが多いため、一般の人から見ると、わかりにくく注目を浴びにくい。数十年前から「プログラマー35歳定年説」(35歳を過ぎるとエンジニアは技術について行けず、管理職などに職種を変えるしかないという説)がささやかれてきたように、エンジニアは使い捨てで大切にされないという印象も定着してしまっている。

 このようなことから、SI事業は、終わってしまったビジネス、つまり、「SIerオワコン」(一時は栄えていたが現在ではダメになってしまったということ。「オワコン」は「終わったコンテンツ」の略)という印象が強いようなのだ。さらに言えば、ゲーム業界やウェブサービス業界の主な企業も、首都圏に集中しているため、目が地方に向かず、SI事業者に就職や転職することのハードルは高くなる。

エンジニア不足でストップするプロジェクト

 結果として、地方の企業は、IT投資を増やしたとしても、エンジニアの供給制約が発生してしまって、実際の構築まで進めることができないということになってしまう。前述のITR調査にあるように、景気回復に従い、企業のIT投資意欲は増加している。そのため、IPAによる調査(IT人材白書2013)によれば、全国的にITエンジニアの不足感が高まってきている。個人的な情報ではあるが、実際、昨年末、忘年会で、地方でSI企業を経営する知人から、「人手不足で、エンジニアを募集しているけれど、人が集まらない」ということを聞いている。

previous page
3
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

赤井 誠
[MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長]

ITマーケティングコンサルティング等。京都大学工学部卒、神戸大学大学院経営学研究科修了。キャリア・デベロップメント・アドバイザー。
日本ヒューレット・パッカード株式会社に入社後、ソフトウェア開発を経て、2003年からLinuxビジネス立ち上げのリーダーとなり、日本HPをLinux No.1ベンダーに導く。2010年より、株式会社サイバーリンクスにて新規事業開発に従事。2011年4月 MKTインターナショナル株式会社を起業し、現職。 『マックで飛び込むインターネット』(翔泳社) の執筆以降、ライター活動も実施中。『リーダーにカリスマ性はいらない』(中経出版)、『MySQLクックブック』『JBoss (開発者ノートシリーズ) 』(オライリージャパン) など著訳書多数。
ブログ:あかいまことのブログ
Twitter id: mktredwell

DOL特別レポート

内外の政治や経済、産業、社会問題に及ぶ幅広いテーマを斬新な視点で分析する、取材レポートおよび識者・専門家による特別寄稿。

「DOL特別レポート」

⇒バックナンバー一覧