国防予算の削減は難事業だ。オバマ政権はことある毎に東アジアへのコミットメントを強調しているが、例えば米国内にも基地に依存した「基地経済」があるはずだ。今秋に中間選挙を控える政権にとって、その予算を削減して地元の与党議員が落選するような羽目は是非とも避けたいだろう。

 仮に中国がまったく非協力的で、太平洋向けの予算が節約どころか増額が必要な気配になれば、国防予算の削減はますます困難になる――そういうつらさを抱える二期目のオバマ政権にとって、尖閣諸島や南シナ海で重たくなった太平洋の防衛負担を軽減するニーズは、想像以上に切実なのではないか。

 習近平主席にとっても、最優先課題は「いまの経済難局を乗り切る」ことであり、この時期に周辺国との揉めごとは避けたい。とくに米国との関係を悪化させてはならない。だからこそ就任して日の浅い昨年6月に訪米してオバマ大統領と会談した。

 また、7月には「海洋強国」講話、9月には「周辺外交」講話と、ソフトトーンの講話を二回している。前者は末尾の一文を鄧小平流の「棚上げ路線の堅持」で結んでいるのがミソであるし、後者は「核心利益」が一度も出てこなかった。それはオバマ政権に聞かせるための講話だった気がしてならない。

「新型大国関係」
を巡る米中の共通利益

 習近平主席は、6月訪米時に「たとえ価値観が異なっても、米ソ冷戦のようなゼロサムゲームは避けて、協力できる点は協力していこう」という「新型大国関係」構築を呼びかけた。

 これに対して、オバマ大統領は「協力関係を構築していく具体的な努力と成果が必要」と、慎重な態度を示したが、その後「行けるところまで行ってみよう」式に前向きになった形跡がある(スーザン・ライス補佐官の11月講演)。

 中国は、米国の財政削減問題の困難を冷徹に見通しているが、問題は、いまや中国も経済的困難に直面していることだ。米中対話の跡を追っていくと、中国はその経済的な困難やこれに立ち向かうための改革を打ち出したことを、かなり率直に米国に語った形跡がある。そう聞いたオバマ政権は「これで中国を巻き返せる」と考えるより、「太平洋での防衛負担を軽減できるかもしれない」と考えたのではないか。

「新型大国関係」は、互いに内政に重たい課題を抱えるいま、対外摩擦を極力避けるための方策として、米中両国の切実なニーズをうまく捉えていることに留意する必要がある。

 オバマ政権が前向きになった途端、中国が非常識な防空識別圏を設定してしまったことで、両国の「新型大国関係」模索の試みは、のっけから躓いた格好だが、かと言って一期目のように「臆せずぶつかる」対中政策に戻ることも難しいだろう。