設計値を、自社に有利な数値にするか、厳格な数値にするかは、各自動車メーカーのコンプライアンスに委ねられている。そのため、各社によってバラツキがあり、不公平な審査になっているのだ。

 さらに、実燃費との乖離、燃費審査の不公平といった二つの問題は、米国で事業展開する日系自動車メーカーにとって訴訟リスクの元凶になりうる。

 日本・欧州の燃費審査は、政府機関もしくは政府公認機関がお墨つきを与えるやり方だ。その一方で、米国では、EPA(環境保護局)に新車を持ち込み、テストドライバーは当局の人がやる。下手なドライバーに当たれば悲惨だけれど、事前にどのドライバーに当たるのかわからない、という意味ではどの自動車メーカーにとっても公平だといえる。

 当局の審査に通過しても安泰ではない。市場投入されてからも、カタログ燃費と実燃費に乖離があれば、ユーザーが訴訟を起こすこともあり得る。また、「この会社は日本仕様と米国仕様のダブルスタンダードを持っている会社だ」と内部告発されるリスクすらある。過度な燃費競争が、国際競争力を落とす結果になりかねない。

日本・欧州は合流も米国は離脱
国際「燃費試験法」

 もっとも、現段階では、苛烈な燃費競争に歯止めをかけることは難しそうだ。というのも、国内では、燃費基準はユーザーの購買動機になっているばかりではなく、燃費がよければよいほど税金が免除される税制になっている。「税金の再配分が、フェアとはいえない燃費審査で決められるのはおかしい」(自動車メーカー幹部)。

 実は、燃費や排ガスの試験方式をグローバルで一本化していこうという動きがある。国連自動車基準調和世界フォーラムにおいて議論されており、今年3月末までに国際的な燃費試験法が採択される予定で動いている。ところが、すでにこの共闘戦線から米国は離脱しており、ダブルスタンダード問題の解消に寄与することは難しい情勢だ。

 燃費一辺倒で突き進んできた自動車メーカーも、その喧伝に一役買ったメディアも、健全な市場形成へと導くときに来ている。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)

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