日本の要として、潤沢な公的資金を投入されている日本トップの国立大学――。東京大学は、このようなイメージを持たれていることが多い。

今回は、同大学の財務データを中心に、東大・東大教職員をめぐる経済状況を見てみよう。本当に、東大は「お金持ち」なのだろうか?

1つの事業体として
東京大学を見てみよう

 日本の大学の中では、東大はかなり恵まれた経済状況にあると考えられている。筆者も、「たぶん、そうなのだろう」と感じることが多い。

 たとえば、東大で新規に建造される建築物は、配慮を尽くして建造されている。その配慮は、中で行われる活動の効率や居心地にとどまらない。たとえば研究を行うための建築物には、外部からの振動やノイズへの充分な配慮が行われていることが望ましい。内部からの磁気などが外部に悪影響を及ぼさない配慮、有害な廃棄物を安全に処理するための配慮も必要だ。

 このような配慮は、東大以外の大学でももちろん行われている。しかし、資金力に余裕があればあるほど、容易にはなるであろう。そして、資金力の強みを感じさせられる場面は、やはり少なくないのだ。

 今回は、東大の資金力について、他大学と若干の比較を行いつつ概観してみたい。

東大はどういう規模の事業体?

 東大の財務情報は、東大Webサイトの「財務情報」で公開されている。

 本稿執筆時点で最新の「平成24年度 決算の概要」を見てみると、2012年の東大の収支は、

経常収入 2138億円
経常費用 2092億円
当期総利益 46億円

 であった。また、同年の人員は

教職員数 1万36人(有期雇用職員を含む)
学生数  2万8206人

 であった。ざっと、

「1万数千人(注)で、2000億円規模の活動を行う事業体」

 と見てもよいであろう。

(注)学生数には、大学院生(約1万4000人)が含まれている。大学院生は、基本的には学費を支払って大学院に在学している学生ではあるが、教育・研究活動にさまざまな形で貢献している。また、TA(ティーチング・アシスタント)・RA(リサーチ・アシスタント)として、非常勤職として雇用されていることも多い。