何もしなければ地方は恩恵ゼロ
新しい産業を創り出すことが重要

 三菱総合研究所は昨年11月に“ビジョン2020”推進センターを設置し、東京五輪を契機にどのような「レガシー」を残せるのかについて提言している。同研究所の仲伏達也参事に話を聞いた。

――1964年と2020年の東京五輪では、それぞれ「戦後からの復興」と「東日本大震災からの復興」というテーマを掲げていたが、2020年大会が始まるまでに復興や成長といった目標は本当に果たせるのか?

仲伏氏 果たせるように持って行くべきであり、そのための準備期間として2020年までは短すぎることはないと考えている。ちょうどよい期間ではないだろうか。

 十分な期間ではないかもしれないが、それこそ10年、20年という期間だと目標が無いにも等しい。ただ、復興に関していえば、入札が不調に終わるケースも少なくない。建設業界は人手不足に悩まされており、建設資材の価格も高騰している。こういった状況下でオリンピックがやって来るわけだが、何も手を打たなければ業界に悪影響が出るのは間違いなく、政府によるテコ入れが必要だ。

――これから迎えるであろう「オリンピック特需」で、どういった産業が伸びてくるのか?

仲伏氏 「特需」で発生する需要はどこかからの代替や先踏みの需要である可能性が高い。もちろん、観光や建設といった分野での伸びは期待できるが、トータルで考えた場合にどれだけの伸びがあるのかという疑問は存在する。

 どういう分野で伸びがあるかを期待するよりも、何か新しいもの(産業)を創り出していくべきだ。北京とロンドンでは建設業に対する需要の度合いが異なるが、過去の五輪では基本的に特需の恩恵を受ける産業に大きな違いはなかった。

――2020年大会に向けて、これからさらに東京に人とカネが集中投下されていくが、これによって地方経済が疲弊してしまう危険性はないのか?

仲伏氏 放っておくとあるだろう。多くの観光客や大会観戦者が五輪期間中に日本を訪れるが、どのようにすれば彼らが東京以外の場所にも足を運ぶのか、またリピーターとなって日本を訪れてくれるのか。7年あれば、これらの課題に対応することができるだろう。

 首都圏の空港のキャパシティを上げるべきだという話は必ず出てくるだろう。しかし、逆の発想もできる。地方空港を利用してもらい、それぞれの町で観光を楽しんでもらってから、東京に移動するというルートを戦略的に設けていくのも一案だ。

 他にも新潟県燕市のように地元の産品を五輪で使ってもらうために官民連携プロジェクトを立ち上げた自治体もある。地方の産品や被災地の産品を優先的に使うことによって、また地方から東京に向かうという外国人向けの観光ルートを開拓することで、五輪開催地の東京のみが一極集中で潤うという構造を変えることは可能だと思う。こういった可能性は意図的にやらなければ出てこないので、地方都市も五輪に向けて何ができるかを考えて、実行に移すべきだろう。