アパレル店員の「お似合いですよ」は何であんなにウソっぽく聞こえるのか?【社会心理学者が解説】写真はイメージです Photo:PIXTA

アパレル店員に「お似合いですよ」と言われた瞬間、どこかで「本当だろうか」と身構えてしまう。そこには、相手の心を推測するときに私たちが無意識に用いている“思考のクセ”がある。人はどのようにして他者の意図や感情を読み取っているのか。社会心理学者である筆者の知見から、その仕組みをひもとく。※本稿は、唐沢かおり『「気が利く」とはどういうことか――対人関係の心理学』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

人は他者の心を想像する際
何を根拠にしているのか?

 私たちはどのように他者の心を読み取ろうとしているのでしょうか。

「心の理論」とよばれる心理学の研究領域は、心の読み方に、2つの方略(編集部注/特定の目的の達成のために意識的に選択し実行される工夫やプロセス)があると主張しています。それぞれ、理論説とシミュレーション説といいます。

 理論説は、他者に関して持っている知識を用いて、心を推論する方略です。

 知識は、これまでの付き合いや伝聞から得た情報が基盤になりますが、それ以外に、ステレオタイプとよばれるものも含まれます。性別、人種、職業、地位など社会的なカテゴリーに関して、私たちが持つ固定化された信念や知識のことです。

 たとえば「この人は女性だからこのように考えているだろう」と推論するのが、ステレオタイプを用いた理論説の提唱する方略になります。

 ちなみに、ここでいう信念とは、日常経験の積み重ねを通して獲得する、素朴な「自分なりの考え方」というような意味で、その強さも、人により、また内容により様々です。