顧客との対話にとどまらず、顧客と共同でビジネスを作る。そんな大胆な企業がデンマークにある。言わずと知れたレゴである。
1932年にデンマークで創立された同社は世界で最も古い玩具メーカー大手の一つだ。なんと一秒あたり約600ピースを世に送り出し、ブロック玩具でトップシェアを誇っている。
しかし、2002年度売上1900億円で黒字(簡単のため20円=デンマーク・クローネ)から、2004年には売上1260億円損失360億円に転落し、遊園地を売り、子供服やソフトウェアの自社製造から撤退した。従業員は2003年の6500人から2007年には4200人へと縮小している。それが、2006年は売上1560億円当期利益260億円、2007年は売上1610億円当期利益210億円と短期間に復調した。
背景には、Web2.0という言葉が出る前から顧客とのコミュニケーションを図り、さらには、リスクをとって顧客とのコラボレーションを推進した、企業モデルの革新があったのである。
情熱的なファンによくいる
変人やオタクを受け入れる
ジェイク・マッキーがグローバル・コミュニティ開発マネジャーとして入社した2000年時は、レゴは成功のワナにはまった保守的な大企業だった。
彼は売上の5%しかない大人のファンに注目した。熱心な大人のファンは、一人で多大な時間をレゴの趣味に投じ、もちろん購買額も桁違い。なにより、レゴの社員も驚くようなすごい作品をつくっているのだ。
しかしレゴ社内の大勢は、子供用で忙しいのに大人にかまっていられない、そして「我々は、求めてもいないアイデアを受け入れない」という姿勢だった(ジェイク・マッキー講演より)。
入社間もなく、ジェイクはレゴのCEO、法務、マーケティング・マネジャーを連れてレゴのイベントに向かった。CEOは、なんてスゴイ作品なんだと驚嘆した。しかし、法務は色々とうるさいことを言い、マーケティングは売上にどう関係するか苦慮した。当時のレゴは、売上の多くをもたらしてくれるウォルマートやトイザラスなど大手小売にご執心で、ユーザーのことは大して気にしていなかったのだ。よくある大企業病がレゴでも進行していたのである。