トランプ大統領Photo:Anadolu/gettyimages

ひとまずLAの衝突は沈静化
トランプ政権は成果を誇るが…

 トランプ政権による不法移民の摘発への抗議運動が暴動に発展したカリフォルニア州ロサンゼルスで、市内の一部に出されていた夜間外出禁止令が6月17日に約1週間ぶりに解除された。

 トランプ政権の強硬な手法をきっかけとした抗議運動は一部で暴徒化し、路上で車が炎上する様子が報道されるなど、米国のみならず世界に衝撃が走った。トランプ政権は、カリフォルニア州などの地元自治体の反対を押し切って、ロサンゼルスに州兵や海兵隊を投入しており、その是非を巡っても、米国の世論は二分された。

 米国がイラン核施設への空爆に踏み出し中東情勢の緊張が高まったことで報道の中心から外れてしまい、いつのまにか静かに終わってしまった印象はあるが、米国社会の分断の深刻さをなお象徴する出来事だった。

 トランプ大統領は、騒乱の沈静化を自らの成果として誇っている。ロサンゼルス市のバス市長が外出禁止令を解除する前日に、トランプ氏はソーシャルメディアのトゥルース・ソーシャルに、「わたしが州兵を動員しなければ、今ごろロサンゼルスは燃え落ちていただろう」と書き込んでいる。

 だが騒乱はトランプ氏にとって打撃となったとみるのが妥当だろう。世論調査専門家のネイト・シルバー氏が集計した各社世論調査の平均では、ロサンゼルスでの騒乱に前後して、トランプ氏の移民政策に対する支持が50%を割り込み、「支持しない」との回答が多数派になっている。

 不法移民に対する米国の世論が軟化したわけではないが、不法移民の摘発を支持する有権者も、混乱を招くような強引な手法には批判的だ。

 6月14日には、「ノー・キングス(王はいらない)」を掲げるトランプ政権への抗議運動が、全米各地で展開された。ロサンゼルスでの衝突にも触発され、全米2100カ所で行われたという抗議運動には、400万~600万人が参加したと試算されている。

 2017年に第1次トランプ政権が発足した際に首都ワシントンで行われた抗議運動(「女性大行進」)には、一日の動員では米国史上最多の300万~500万人が参加したとされるが、これに匹敵する人々が参加したことになる。24年のトランプ氏の再選で、反対勢力には「諦めムード」が漂っているとされてきたが、いざという時の米国世論の熱量はあなどれない。

 だが世論の熱量と対照的なのが、米国企業の沈黙だ。