台北は、東京以上のモバイル大国と言えるかもしれない

 当連載の前回の記事で紹介したように、アドアジアの次回(2015年)開催地は台北と決まっている。同じアジアと言っても、台湾、特に台北の通信事情はこれまで紹介してきたインド、タイ、ベトナムなどとは明らかに違う。台湾でも現在は3G環境だが、今年度中には4Gが導入される予定だ。

 現在割り当てを受けているキャリアは中華電信、台灣大哥大(台湾モバイル)、遠傳電信(ファーイーストン)、亞太電信の4社だが、4G に関しては、鴻海集團(Foxconn)が出資するベンチャーなど2社に免許が新規で交付され、現在、この業界は人の動きも激しくなっているようだ。

 台北ではWi-Fiが広く普及しており、日本以上にストレスフリーでインターネットにアクセスできる。スマートフォンの保有率は60%を超えており、ダウンロード経験も97%、ソーシャルメディア利用率も91%というモバイル大国だ。

 ソーシャルメディアに関して言うと、LINEが一番人気で、次いでFacebook。Twitterはあまり使われておらず、中国版Twitterといわれる微博(ウェイボー/Weibo)や、中国の騰訊(テンセント)が開発したスマートフォン向けのコミュニケーションアプリ、微信(ウェイシン/WeChat)などを利用する人が多い。

 スマートフォンは生活にすでに根付いていて、スケジュール管理も買い物も、テレビも、スマートフォンですませる人が多い。このように、台湾はモバイル先進国であるが、マーケティングにも長けているかと言うと、ちょっと事情が違うと思う。

スマートフォンによって
モバイル・マーケティングがようやく認知

 台湾ではモバイル広告=アプリという意識が強く、2010~11年頃には、多くの企業がアプリを制作した。先進的な技術を使ったアプリもあったが、そもそも何のためにアプリを作るのか、KPIは何なのか、何を目的として作るのかといった、マーケティングプランが稀薄だった。そのため、効果測定もできずに、広告効果そのものも上がらなかった。

 日本と違い、台湾ではフィーチャーフォンはほとんど電話専用機だったという経緯がある。そのため、その時代には、モバイル・マーケティングが広がることはなかった。技術的な与件はそろっていたのだが、広告主に使ってもらう地道な提案が足りなかったのかもしれない。

 欧米と同様にスマートフォンの登場によって、ようやくモバイル・インターネットが強く意識されるようになり、スマートフォン向けアプリが新たなマーケティングツールだととらえられたわけだ。モバイル広告についても、Googleの検索結果広告とロケーションを上手く活用したVponというメディア以外には、広告枠のあるメディアも存在していないと言っても過言ではなかった。